現代の感覚を染め上げる「染色家 斎藤孝子」/神奈川県横浜市

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絵画性豊かな「型絵染め」

型紙を使って反物を染めるというと、これまでの旅でも訪問した江戸小紋や長板中形が有名だが、今回伺った斎藤孝子さんは”型絵染め”という技法。基本的には他の型染めと同じ工程を行うが、1956年に工芸家の芹沢銈介氏が重要無形文化財に認定された際に、他の型染技法と区別するために初めて用いられた。芹沢氏の作品が意匠力に富んだ絵画性豊かな型染であることから「型絵染め」と名付けられたのだ。
型染めは、ほとんどの場合、分業である。デザインをする人。型紙を彫る人。糊を置く人。染める人。それぞれに専門の職人がいる。ところが斎藤孝子さんはデザインから作品の仮縫いまで、すべての工程をひとりで行っている。

染色家としての歩み

東京芸術大学時代には陶芸を専攻していたという斎藤さんだが、卒業と同時に染色の工房で仕事をすることになった。それからは染色一筋。お仕事をしているうちにある作家に関する本を読んだことが、転機だったという。その作家とは重要無形文化財に認定された稲垣稔次郎氏。型紙からすべて自分で作り型絵染めを行う作家だった。その作品をみて「こういう世界が染物にあるんだ。わたしもこれをやりたい」と思ったそうだ。

神奈川という地から受ける影響

その後、型絵染めに必要な技法を独学で学び、幾何学模様や草花という普遍的なモチーフを描きながら、色合い、間合いで、斎藤さん独特の品格を漂わせる作風を築いた。
作品を拝見しながら、「鮮やかな色がお好きなんですか?」と中田が質問する。
「そうですね。横浜で作品を作っていると、やはりどこか都会的で華やかな着物になりますね。どの地域に住んで作品を作るかということは作家にとっては大きな要素だと思います」と斎藤さん。一方では、山野草に惹かれて、箱根の仙石原の湿地に出かけては草花のデッサンを重ねたこともあるという。横浜という大都市とすぐ傍に自然豊かな山や海がある。神奈川県という環境が作品に息づいているようにも感じられた。

着物に込める想い

型紙を用いた染物は、古くからある模様、図柄が使われることが多い。そこで斎藤さんになぜ自作の型紙から制作するのかを尋ねた。
「昔からあるデザインの型紙を用意して染めるというのは、それはそれで良さがある。でも私は自分でどういうものを作りたいのかというところからはじめるわけです。アイデアがあって、デザインして、型紙を作る。技法は伝統的なものですが、現代の感覚でデザインした常に新しい着物を染めたいと思っているんです」
斎藤さんの作品には、伝統の中にも現代の感覚を反映したいという想いが込められているのだ。「着物はほんとうに奥が深い。一生作り続けるに値する、面白い世界ですよ」そう語ってくださった。

れているのだ。「着物はほんとうに奥が深い。一生作り続けるに値する、面白い世界ですよ」そう語ってくださった。

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染色家 斎藤孝子
神奈川県横浜市
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