日本で5番目にお寺の多い地域
お寺、といわれてすぐに思い浮かべる地域といえば、京都、奈良だろう。そのほかにお寺で有名な地域は、鎌倉、平泉。だが、会津も仏教文化が盛んな土地。さきに挙げた四つの地域に次いで日本で5番目に寺院の数が多いのが会津なのだ。
そう教えてくれたのが、福島県河沼郡会津坂下町にある真言宗豊山派 恵隆寺(えりゅうじ)の副住職を務める藤田恵盛さん。
恵隆寺は540年に梁国の青岩が高寺を開いたことに始まるというから、1500年近い歴史を持つお寺だ。現在の土地に移ったのは1190年のこと。境内には立木観音堂というお堂があり、会津ころり三観音霊場、会津三十三観音の三十一番札所ともなっている。
一本の木から彫られた観音様
ご住職に案内されて、ご本尊の十一面千手観音が祀られている観音堂に入る。普段は御開帳されていない観音様を特別に参拝させていただくことができた。ご開帳のご祈祷を終え、対面することのできた観音様の背の高さは約8.5メートル。お顔を拝むには、見上げなくてはいけないほどの大きさだった。
約1200年前の808年に彫刻されたというこの観音様は、立木観音とも呼ばれる。立ち木、つまり一本の木から彫刻された観音様なのだ。それを聞いて改めて観音像に目をやる中田。うなるように「こんなに大きな木があったんですね。それにしても大きい」と声をもらした。
胴回りでも、大人が抱きかかえることもできないほどだ。立木観音は国の重要文化財に指定されている。ちなみに、立木のまま彫刻された木像としては日本最大級のものだ。
満願成就のだきつき柱
ご本尊の立木観音とともに有名なのが、だきつき柱。立木観音を正面に見て、右手にある大きな柱が、満願成就すると信仰されているだきつき柱だ。観音様にだきつくかわりに、この柱にだきついて、祈願をしたのが始まりだそうだ。だからいまでも、左手に見える観音様に顔を向けてだきつくのだという。
観音堂の改修のときに、だきつき柱を残してほしいという声がありどうにかして古くなった柱を残したいと、上下にあたらしい木を継いで柱を残したそうだ。現在でもこのだきつき柱を目当てに参拝に訪れる人も多い。
「みなさん、お堂に入るとまず“あれがだきつき柱だ”ってそっちに目がいってしまうんですよ。わたしの話そっちのけで、この柱のほうへ…」と笑って話をしてくれた。
中田も柱にだきつく。何を願ったのだろう。スタッフにも「ほら、みんな」といってすすめる。人がお寺に集まるというのはこういう温かい雰囲気を求めてというところもあったのではないかと思える光景だった。