6歳で家元を継承し現代的な生け花を
小原流は19世紀末から続く華道の流派。お話をうかがったのは五世家元の小原宏貴さん。小原さんは1988年生まれの35歳。中田よりも10歳も若い青年だった。お父さんの四世が急逝してしまったこともあり、小原さんは6歳にして家元を継承した。10歳のときに初めて展覧会に出品し、2012年3月に東京・日本橋髙島屋で開催された自身初の個展には、6日間で約45,000人が来場した。
小原さんの作品のなかには、いけばなという言葉のイメージからは想像もつかないようなものもある。数メートルもあるような大きなインスタレーションもあるし、人工的な素材を使ったものもある。その表現は、現代に合わせた伝統の進化形といえるかもしれない。
変わっていく小原流
「小原流の伝統様式は流祖と二世で完成させられた部分があるんです」と小原さんは話す。小原流の特徴のひとつは「盛花」というもの。これは小原流が生み出した感性だ。それまでのいけばなは線の表現がほとんどだった。盛花は口の広い水盤を使うなどして、花をたっぷりと盛るようにいける。そうして面、奥行という表現を可能にしたのだ。
そして、伝統を受け継ぎながらも、変わっていくことの過程があった。お祖父さんにあたる三世家元はシュールレアリスム的な作風を作り上げ、お父さんの四世家元は現代に合うもの、洋風空間にも合う作品に取り組んだ。そして自身は現代アートにも通じる作品を創りあげる。伝統を受け継ぎ、表現の幅を広げるように発展しているのだ。
文化は人をつなげる接着剤
目の前で花をいけてくれる。ハサミを使って枝を切り、空間を作っていく。大事なポイントは「どこかを引くことでどこかを強調する」ことだという。中田は「自分ではまったく考えられない。絶対に、どうしたらいいかって迷って手が止まっちゃうだろうな」といって小原さんの動きに見とれていた。
「自分が考えるいけばなの本質はお花を触ると楽しい、いけると楽しいというところ」と小原さんはいう。「だから現在のライフスタイルに合わせることが大事。昔はお花というと、和装に畳というイメージがあったでしょうけど、現在の教室はテーブルでやることがほとんどです。もちろん教室だから、形式から入りますが、やっぱり本質は自由な表現だと思いますね」そうしていけばな教室に多くの人が集まり、集まった人同士が輪を広げていく。
「人と人がつながる。文化っていうのは、その接着剤だと思うんです」
いけばなをとおして、花や伝統、そして人と出会う。これもまた、いけばなという文化の大きな魅力なのだ。