こころを表す礼儀作法「小笠原流礼法」小笠原敬承斎さん/東京都千代田区

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礼儀作法とは

「相手をおもんばかる気持ちが礼儀。その心を形にあわらわすのが作法。心と形が一つになってこそ礼儀作法が成り立ちます」。そう話すのは、小笠原流礼法の宗家、小笠原敬承斎(けいしょうさい)さん。小笠原流礼法として初の女性宗家だ。

小笠原流礼法の歴史

小笠原流礼法の起源は古く、室町時代にさかのぼり、弓術や馬術、軍陣故実などの武家社会の故実全般の流派である。そのなかの礼法を受け継ぎ、旧小倉藩主家の当主であり、小笠原総領家であった小笠原忠統が昭和期に創設したのが、現在の小笠原流礼法宗家本部だ。
小笠原流礼法はもともと武士社会の礼法であったことから、江戸時代には幕府公式の礼法となった。そのため一般人からは「格式の高い礼法」と見られ、学びたいという人が多く出たのだ。

相手を思う「こころ」

取材をはじめるにあたって、敬承斎さんからお題が出た。
「この扇子をであおいでみてください」と、中田に扇子を手渡す。少し困惑した表情の中田は、扇子を大きくひらいてあおいだ。
「通常はそのように用いますよね。しかし、小笠原流の考えでは、扇子を開かない部分を残して使用いたします」
つまり、大きく開いてあおぐことは、暑いという気持ちが他の人に伝わってしまうので、周囲に気を遣って少しだけ開くということ。
礼法の基本は、他の人を思いやる気持ちだと敬承斎さんはいう。
たとえばおじぎの仕方。「ありがとうございます」と言いながらおじぎするのではなく、きちんと相手の目を見て言葉を伝える。何度もお辞儀をするとかえって軽い印象をつくってしまうので気をつける。また、上体をさげるとき、あげるときを同じスピードで行うといい。息を吸いながら身体を倒し、止まったところで吐き、吸いながら戻るといった息遣いがある。もちろんそういう「形」は知っているほうがいい。けれども、大事なのは心と状況判断だという。
「常々、先代は、時代が変わっても心は変わることはないと申しておりました。生活様式の変化にともない、形は変わりますが、根底にある“心”はいつの時代も同じなのです」

最低限の礼儀作法とは

「僕らは、正式にすべての礼法をこなすというわけにはいかないと思いますが、小笠原さんが考える最低限の礼儀、ここまではやってほしいというところを教えてください」
中田がこのように正直に聞くと、敬承斎さんは「礼儀とは最初にお伝えしたように、相手を大切に思う心です。したがって、相手に不快感を与えないように、という心遣いが最低限の礼儀であるといえましょう。その心遣いを基に美しくかつ自然に振る舞うこと。それこそが礼法です。そのためには適格な状況判断が重要で、毎日の心がけが欠かせないと思います」と答えてくれた。
相手を思う気持ちとTPOを判断すること。だから教室の生徒さんにも「自分で気づくことが最も大切」という考えのもとに指導を行っているという。何より自身がこの道に入ったのも、イギリス留学の際に日本文化のすばらしさに”気づいて”のことだったというのだから。

ACCESS

小笠原流礼法宗家本部
東京都千代田区九段北2-3-25
URL http://www.ogasawararyu-reihou.com/
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