「藍を建てる」とは?
「一草(いっそう)」は、藍染作家の梶本登基子さんが主宰する藍染工房。徳島の天然藍を染料に、クヌギ・カシ・サクラなどの木の灰汁(あく)を媒染とした、昔ながらの手法でおこなっている。
草木染めは、たんに植物の色を付けただけでは色が定着しない。そこで、灰汁やミョウバン、銅や鉄などの媒染剤を使って化学反応を起こさせ、色を定着させる。使う媒染剤によって、同じ植物でもまったく違う色があらわれる奥深い世界だ。藍染めの場合、「すくも」(藍を発酵させたもの)だけでは色が出ないため、木灰汁(アルカリ液)や石灰、ふすまなどの栄養分を加えて発酵させなければならない。いわゆる「藍を建てる」工程だ。
藍は生きている
この染め液のなかでは藍の還元菌という微生物が生きていて、発酵具合に応じてさらに石灰やふすまを投入する。もちろん、見えない微生物と向き合うのは骨が折れる。よく「藍は生きている」という言葉が使われるが、まさにその通りで、温度、アルカリ度、与える栄養によって、微妙に発酵具合が違ってくるのだ。
こうしてできた染め液に布をひたし、絞ってから空気にさらして酸化させたあと、水で丁寧に洗うと、そこに美しいブルーがあらわれる。染めを重ねるごとに、黒に近い深い色が生まれてくる。
様々な色合いを楽しむこと
藍の色には、古来、たくさんの美しい名前がつけられてきた。ほとんど白に近い「藍白(あいしろ)」、それよりもう少しだけ濃い「瓶覗(かめのぞき)」、黄色がかった薄い藍色の「浅葱(あさぎ)」、暗い青の「縹(はなだ)」、縹に黒味がかった「納戸(なんど)」、縹に赤みがかった「濃縹(こきはなだ)」などなど。薄い色から濃い色まで、色の変化が多様なのも藍染めの魅力。
一草では、この藍の色の魅力を最大限引き出すため、素材を生かしたシンプルなものづくりをモットーにしている。美しく染め上げられた布を見るだけでも興味がそそられる。中田も染色の手ほどきを受け、その出来栄えには思わずにんまり。
まずは身近なものから、藍の奥深さを感じてみてはいかがだろう。