漆の性質を体感できる「漆芸空間造形」 渡邊希さん/北海道

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強固で美しい漆の家具

漆造形家 渡邊希さんは札幌を拠点に、漆を用いた立体造形、うつわ、小物、家具などを手がけている。作品の中でもひと際目を引くのが、立体造形や椅子テーブルなど大きなものだ。工房にある一客の漆の椅子は、朱赤で柔らかい曲線の造形。座ってみると、思ったより硬くしっかりしている。「強度があり、故意に突いたりしない限り壊れない」と聞き、これには中田も驚いた様子だ。作品はすべて乾漆技法でつくられ、家具類は漆と麻布だけで頑丈で美しい作品を生み出す。

漆の艶と力強さを表現

以前はジュエリーなど小さなサイズのものを作っていた渡邊さん。乾漆を主体に、現在の作品は大小さまざまだ。オブジェや家具など大きな作品を作るようになったきっかけを聞くと、「漆の麻を固める力に惹かれて興味を持った。漆の艶や力強さ、その性質を一番表現できる形を選んでいる」と話してくれた。「漆の力強さは一般的に知られていない」と漆に造詣の深い中田も興味深そうに相槌を打った。大きな漆の作品には意外性と驚きがある。

光をまとう漆作品の工程を知る

「そばの実をこねる鉢で漆を精製し、その後水分を飛ばして使う」と渡邊さんは工程を一通り説明してくれた。漆の家具は型を作って麻布5~10枚を覆って漆で固められる。最後は磨いて仕上げを行い、作品が完成。伝統的な漆の新しい解釈は国内外で広く注目されるところだ。漆黒の造形は、素材の持つ透明感のある艶が光を生み出す。素材から着想を得た漆の空間造形は、心の内側へ深くこだましていくようだ。

ACCESS

漆芸/渡邊希さん
北海道
URL https://nozomiwatanabe.com/
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