形を変えて江戸切子の温もりを現代に残す 田島硝子株式会社

形を変えて江戸切子の温もりを現代に残す
田島硝子株式会社

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今は数少ない吹きガラス工房

昭和30年代には東京に50軒以上のガラス工房があったというが、安価な輸入物におされ、現在は昔ながらの吹きガラスの工房は3軒しか残っていないという。その中の一つに1956年、昭和31年に創業した江戸川区の田島硝子(株)がある。

田島硝子(株)は江戸時代から受け継がれている「江戸硝子」を扱う工房だ。江戸硝子とは江戸時代に生まれた伝統的な技術を用いて手作りされるガラス製品のことで、それを切子加工すると「江戸切子」になる。

この江戸切子は現在では国の「伝統工芸品」に指定されているほど有名であり、それだけ未来へ残す価値は高いものになっている。


人気のきっかけになった「富士山グラス」

「番頭だった祖父が独立して開業しました。最初は工房を借りてスタートしたそうです。昔はガラスづくりには石炭が欠かせず、そのため運搬に便利だった川沿いに多くの工房がつくられたようです」と田嶌大輔社長。

工房を訪ねると、昔ながらの窯に向って多くの職人が汗を流しながらガラスを吹いている。伝統の江戸切子も作り続けられているが、この田島硝子(株)を一躍有名にしたのは、富士山をかたどった「富士山シリーズ」だ。ビールグラス、おちょこ、ロックグラスなどのお酒を入れるグラスは、外国人の土産物としても人気が高いという。

「富士山が世界遺産に登録されたときに、ホテルからの依頼で作ったのがきっかけでした。最初はビールグラスを作り、ヒットしたのでシリーズ化しました。おかげさまで生産が間に合わないくらいの状態になっています」

このように伝統的な江戸切子のみにとどまらず、富士山をかたどった普段使いにもおしゃれといわれるようなグラスにも力を入れている。


ガラスの良さを進化させ現代へ

ショールームには、昔ながらの江戸切子からオーダーメイドの商品など、さまざまなグラスが並んでいる。幅広いオーダーにこたえられるのが手作りで作っている田島硝子(株)の強みといえるだろう。

「現代の大量生産の技術では不可能なことでも、職人の技術があれば実現できたりする。ガラスにとっては厳しい時代ですが、この技術は守っていかなければならないと思っています」と力強く語った。

多くの人にもっと気軽に手に取ってほしいという熱い想いが、この厳しい現状でも様々なもの作り続けている大きなモチベーションになっているのだろう。

ガラスならではの美しさを作り上げるのは、伝統の技術が必要である。またそれを衰退させずに現代に残すには職人の情熱、アイデアも必要だ。このように確かな技術と世代を超えた人々にも使ってもらいたいという職人の情熱が相まって、田島硝子(株)の原動力になっている。これからも伝統の技術で新たなアイデアを実現させていく田島硝子(株)の活躍に期待したい。




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ACCESS

田島硝子株式会社
東京都江戸川区松江4-18-8
URL https://www.tajimaglass.com/