茶道の世界に携わる漆の仕事
「中村宗哲」は、千家が指定した千家十職の家系の塗師。茶道具のうち漆器などの塗りを担当し、蒔絵などを施す技を継いできた。現在の当主は初代から数えて13代目。先代は、千家十職の歴史のなかで初の女性当主であったが、それを継いだ現在の13代目も女性である。
今回はその13代目中村宗哲さんにお話を伺うことができた。
「漆は、塗ったり、さすったり、優しく作るものです。子供を育てるみたいに、ですね。ですから女性的な仕事ともいえるのですよ」
塗りあがりまでの工程は、全部で10以上もある。木地(きじ)と呼ばれる、とても薄い木の器に下地漆を付けていく。下地漆を塗り重ね、研ぎあげて形を整え、上塗りをして「塗りあがり」。さらに蒔絵や、色漆で色を入れる作業を行う。種類の違う漆を塗り重ねていくのは、100年後でも使うことができるように、変形しないようにする為なのだという。
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静かで穏やかな工房
工房では、職人さんが下地漆を塗る工程を行っていた。すべてに繊細な作業を要求される技である。静かだが、穏やかな雰囲気の漂う空間だ。中村宗哲さんは子供の頃からこの工房で遊び、祖父である11代目の仕事風景を見てきたのだという。
素朴な疑問を伺ってみる。
「赤い色、朱の漆塗りはよくみかけますが、緑色の漆はあるのですか?」
「あります。せいしつといって、「青漆」と書きます。これはかなり古くからあります。色は漆に顔料を加えて作りますので、様々な色ができます。青や白い漆は新しい色ですね」
最後に普段使っている、筆や顔料などの道具を拝見する。喜び、悲しみ、矜持、親から子へと受け継がれてきた魂が、それらの道具にも宿っているのではないだろうか。
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