健康にいい完全発酵茶「碁石茶」
日本には数多くのお茶があるが、珍しい発酵茶が四国のど真ん中、高知県長岡郡大豊町で作られている。乳酸菌豊富な健康食品として近年注目をあつめている完全発酵茶「碁石茶」は、自然豊かな山あいのこの町で400年以上にわたって作られてきた。
「碁石茶は約400年前に中国から伝わったと言われています。二段階の発酵過程を経ることで生まれる独特の味わいが特徴です。最盛期は100トン以上生産されていたんですが、昭和の終わりには1軒だけになってしまい一時は消滅の危機にありました。でもこの伝統の茶を守りたいということで組合ができ、現在は4軒の農家と1つの法人で碁石茶を作っています」(大豊町碁石茶協同組合の吉村優二さん)
碁石茶をひとくち飲んでみると、少しクセのある酸味が口いっぱいに広がる。中国の発酵茶、プーアール茶に近いようにも感じるが、味わいはまろやか、飲んでいるうちに酸味に慣れてくると、奥行きのある味がクセになってくる。二段階発酵によって豊富に含まれる植物性乳酸菌は、プ―アール茶の実の23倍以上と言われているそうなのだが、植物性乳酸菌は体内で他の微生物に負けず働くため、整腸作用や花粉症、インフルエンザ予防、高脂血症、動脈硬化の抑制効果や血圧低下作用があるなど、注目の効果が学会等で発表されている。
高知県大豊町でしか作れないお茶
発酵茶の一種である紅茶が酸化発酵であるのに対し、碁石茶は微生物をつかって発酵させる。最初は、大きな樽に枝ごと茶葉を入れ蒸した後、枝をとりのぞき茶葉だけにしたものをムシロに広げ、空気を通しカビをつけ、二段階目で木樽にいれて発酵させる。木樽に重ね入れられた茶葉は、まさに“茶葉の漬物”。これを小さく断裁して天日干しすることで碁石茶が完成する。微生物で発酵させるとあって、この高知県大豊町のむしろと榁に付いているカビでなければ、碁石茶は作ることができないのだ。
「碁石茶を作るのは、6月から8月まで。晴れた日を選んで天日干しをするんですが、名前の由来は、乾燥したときの真っ黒な見た目から。天日干しされているこの茶を遠くから見ると、碁石が並んでいるように見えるからだと言われています」
微生物でお茶を発酵させるのは世界的にも珍しく、海外では中国の雲南省やタイとミャンマーの国境地帯くらいしかないのだが、日本では4か所も産地があって、そのうち3か所が四国にあるのも不思議だ。
多くの農業、伝統産業と同じく、碁石茶の生産も高齢化が進み、碁石茶も継承が難しくなっているのだという。だが、その味や効能を知れば、碁石茶のファンも増えるはずだ。美味しくて健康的。そんな茶が日本にあることをもっと多くの人に知ってほしいと思った。