“日本の植物学の父”牧野富太郎が愛した植物に触れる「高知県立牧野植物園」/高知県高知市

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総合型の植物園「牧野植物園」

高知出身の植物学者・牧野富太郎(1862~1957)は、まだ日本の植物が解明されていなかった時代、自らの足で全国を歩きほぼ独学で植物の調査・研究を行った「日本の植物学の父」と呼ばれる人物。新種や新品種など1500種類以上の植物を命名し、約40万点の標本や植物図をのこしただけでなく、78歳にして長年の研究をまとめた集大成「牧野日本植物図鑑」を刊行した。牧野植物園は、彼の偉業を後世に伝えるための施設として、1958年に開園された。開園当時は高知県に自生する植物の栽培や展示を主とする公立の植物園であったが、1999年に牧野富太郎記念館が開館し、植物の研究や植物知識の普及、植物展示を通じた憩いの場の提供を行う総合型の植物園となっている。
「現在は、高知県や日本国内の野生植物の調査、収集、保全に取り組むほか、海外の植物多様性の解明、資源植物の探査も行っていて、世界中から植物の専門家が訪れる施設になっています」(栽培技術課・藤井聖子さん)

牧野植物園では博士の書斎も再現

高知市の五台山の上半分をほぼまるごとつかった広大な面積のなかには、3000以上種類の植物が生い茂り、来場者の目を楽しませてくれる。この牧野植物園では彼がのこした実際の標本や植物図を見ることができるほか、資料に埋め尽くされた牧野博士の書斎「繇條書屋(ようじょうしょおく)」なども再現している。園内にはカフェやレストランがあって、牧野博士ゆかりの植物をテーマにした牧野植物園オリジナルブレンドティーを提供していたり、ボタニカルショップもあるので、散策の合間にひと休みするのもよいだろう。

牧野植物園では自然の状態を再現

記念館で牧野富太郎の偉業を学び、園内を散策する。牧野博士を育んだ自然を再現する土佐の植物生態園や、日本の伝統園芸植物をはじめ、東洋の植物で四季を彩るエリア、ウォーターガーデンやジャングルゾーンのある温室など、まるでもとからあった原生林のようにたくさんの木々が生い茂っているが、実は緻密な配置によって自然の状態を再現しているのだという。大きな温室では珍しい熱帯植物の生態を知ることもできるが、「真夏は暑すぎて、温室のほうが涼しいくらいです(笑)」(藤井さん)

サステナビリティがテーマの建築も

この植物園のもうひとつの見どころは、サステナビリティをテーマに木材をふんだんに使った建築だ。円形になったエントランスは、まるで空をくり抜いたような開放感があり、そこから続く回廊、そして牧野富太郎記念館へとたくさんの植物と見事に“共生”している。設計は、日本を代表する建築家・内藤廣氏。景観に配慮した環境保全型建築の方向性を示す優れた建築物として、第13回村野藤吾賞をはじめ数々の賞を受賞した。
牧野植物園は、植物にさほど関心がなくとも楽しめる植物園だ。歩いているだけでも、深呼吸しているだけでも気持ちがいい。ゆっくり散歩しているうちにそこにある植物に自然と興味が湧いてくるのは、牧野博士の思い、植物への愛情がしっかりと受け継がれているからなのだろう。

©︎内藤廣建築設計事務所

ACCESS

高知県立牧野植物園
〒781-8125 高知県高知市五台山4200-6
TEL 088-882-2601
URL https://www.makino.or.jp/
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