雪の中から収穫された雪中キャベツ「ゆきわりキャベツ」伊折農業生産組合

雪の中から収穫された雪中キャベツ「ゆきわりキャベツ」伊折農業生産組合

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キャベツの産地として珍しい環境

新潟県との県境に位置する長野県小谷(おたり)村は、隣接する白馬村とともに極上のパウダースノーを求めて多くの人が訪れる世界有数の山岳リゾート。そんな小谷村の一角にある伊折集落は、10戸約20人ばかりが暮らす半径200メートルほどの限界集落。ここではとてもユニークな方法を用いて珍しいキャベツが栽培されている。

小谷村で生産されるキャベツの種類

キャベツには大きく分けて、春に流通する葉の柔らかい春キャベツと、通年流通している寒玉系キャベツ、そして紫キャベツなどの特殊なキャベツの3種類がある。小谷村で栽培されているのは寒玉系のキャベツなのだが、普通とは少し違う。8月のお盆前に植えたものを、11月~12月に収穫するのが普通なのだが、ここでは畑に雪が積もるまで収穫のタイミングを待つ「雪中キャベツ」を栽培している。一度収穫したものを雪下で埋蔵するキャベツは全国に存在するが、収穫せず根をはらせたまま1.5mほど積る雪の中で越冬させるのがこのキャベツの最大の特徴なのだ。毎年1月中旬から2月中旬の1か月程の間だけ、雪の中から掘り起こし収穫し出荷されている。

ゆきわりキャベツは、糖度や食感をたのしむレシピに最適

雪中キャベツは、生きたまま凍らないように糖度を蓄え熟成するので、とにかく甘みが強い。通常のキャベツの糖度が4~5度に対して、雪中キャベツは8度以上、高いときで10度にもなるという。雪の中でもさらに成長するので大きなものだと5kg近くになるものもある。鮮度が保たれているので瑞々しく、最も甘くなるという芯の部分はエグみもなくスッキリとした甘さで、例えればトウモロコシのよう。冷たい雪でよく締まった葉のパリッとした歯切れのよい食感もこのキャベツならではの特徴である。

ゆきわりキャベツは生のままサラダがおすすめ

生のままサラダとして食すのが一番のおすすめ。それ以外にもくし型にきったひと固まりを天ぷらに。さっと塩をかければさらに甘みが増しキャベツがこんなにも甘く、濃厚な旨味を感じられるのかとこれまでのキャベツの概念を変えてしまうだろう。この限られた時期にだけ出会うことの出来る旬の味わいだ。

年代をこえた助け合いが育む新たな力

このキャベツを栽培する「伊折農業生産組合」は、伊折集落に住む仲間同士が集まり2005年に発足した。ここ小谷村では、 昔から“兼業農家”が一般的。これまで各個人で行っていた農業を「どうせなら、みんなでワイワイやったほうが楽しいじゃないか」と、組合を立ち上げる事にしたのだ。スタンスは、あくまでも高齢化が進む集落の活性化。「始めた当初は年金暮らしの組合員ばかりだったので、収入は副産物として組合員の小遣い程度になれば十分と考えて続けてきました。それから少しずつ若い人や、県外からも人が入ってくるようになって、年寄りも若者もみんな一緒になって作業して、年長者から教えてもらったわざを絶やさず受け継いでいくことが目的にもなった。若者は若者の知恵で年長者をサポートする。そういった支えあいが自然と起こる環境を大切にしたい。」と話すのは組合長の藤原一幸さんだ。

消えかけた地域の特産品を復活させて

春は山菜、夏はミニトマト、秋にはお米、そして冬は雪中キャベツをと、組合員が共同で収穫しては出荷している。実はこの雪中キャベツ、組合発足当時は雪の下から掘り起こして収穫する労力に生産性が見合わず、周辺地域でも作り手がいなくなってしまっていた。地域の特産品になるものを作りたいと考え組合員みんなで復活させたものだ。そしてこの集落にある組合員の憩いの場でもあり、ビジターセンターでもある体験交流施設「ゆきわり草」の名前を冠して「ゆきわりキャベツ」と名付け育てることになったのだ。

復活させた当初は、前評判通り手間のわりに人件費がかさみ、毎年赤字事業だった。いつやめようかと悩む年が続いた。値段も普通のキャベツに比べて少し高い程度と、その他のキャベツとの差別化に苦戦をしてしまった事も痛手だった。ところが、あるとき地元の新聞社の取材を受けたことがきっかけで注目を浴びると、その後は多くのメディアで取り上げられるようになり、認知度はどんどん上がった。それまで地元中心だった販路を全国区へと切り替え、価格設定も大きく見直した。発泡スチロールにキャベツと一緒に雪を詰めて届けるというアイデアもウケて、現在では都市部の一般消費者から全国の飲食店まで、引く手数多の人気商品となった。「ゆきわりキャベツ」を復活させてから十数年、あきらめずに組合の皆でその灯火を守り続けてきた成果がようやく実り、当初の目論見通り押しも押されもしない、伊折集落の特産品へと成長を遂げたのだ。

幸せという価値観を共有できる村

伊折集落では、老若男女関係なく同じ価値観を共有し、まるで会社組織のように、時には大家族のようにお互いが支え合うことを大切にしている。現状維持をモットーに、ガツガツ稼ごうという発想は全くない。たくさん売れて儲けが出たらみんなで旅行に出かけたり、美味しいものを食べに行ったりと、はたらく事の励みにして喜んでいる。そしてなによりも受け継がれなければ忘れ去られてしまう知恵や技術、美しい里山を残すためにと一人一人が楽しみながら生活をしている。そんな伊折集落の良さを知って村を好きになってくれて移り住む人が増えたらそれはまた幸せ。
世代や性別を問わず多くの声に耳を傾けアイデアを取り入れ、先人たちが培ってきた知恵や技術を皆で継承せんと学ぶ。
10世帯あまりの小さな集落から過疎地を活性化するアクションが次々と生み出されている。

ACCESS

伊折農業生産組合
長野県北安曇郡小谷村大字千国乙11064
TEL 0261-82-2230