音の世界を広げた和笛「笛師 蘭情」/千葉県東金市

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お祭囃子の音に魅了され、世界に通用する西洋音階の和笛を作った。

日本の和笛演奏家の9割が愛用し、佐渡の伝統音楽芸能集団「鼓童」の演奏家も使っているという蘭情(らんじょう)さんの笛。一流の演奏家から愛され続ける秘密は、さまざまな場面に対応できる音階と、素材にこだわった音色にあった。

「昔のお囃子の笛というのは日本独特の律で、洋楽の対応にはまったくなってないんですよね」と蘭情さん。
「要は、歌舞伎や能楽なんかで使う笛は日本の独自の音階になっている、と」
独自の日本音階を持つ笛は、本来、洋楽には適さない。だが、蘭情さんは笛の内部構造を変えて、「ドレミ」の西洋音階に対応させ、現代音楽にも合わせられる笛が誕生した。
「竹は日本のものを使いながら、音階は西洋音階ということで、世界的に通用する笛なんです」

子どものころ、祭りの笛の音に心惹かれたという蘭情さんは、小学3、4年生ですでに独自の笛作りを経験していたという。
「地元の祭りは長い間中止されていたし、僕もいったんは横浜で就職して地元を離れていたんですが、僕が戻ってきた26歳のときに、祭りが復活したんです。それで“いい機会だから”と笛を作って参加することにしたんですよ。そうしたら、いつの間にかこういう世界に入り込んでいた(笑)」

思考錯誤を繰り返し、演奏家の望む和笛を目指す

なんと、蘭情さんの笛作りはすべて独学だそうだ。

「今までは、100本作ってようやく1本成功するという笛作りがおこなわれていたんですよね。でも、それじゃしょうがない。100本作ったら、100本成功させなきゃいけない」
そう蘭情さんは語る。
笛の構造を徹底的に研究した蘭情さんは、どうすればいい笛ができるか、それを構造的に突き止めた。
「僕の場合、独学だったのが大きかったですね。試行錯誤を経て、失敗から学んでいったんです。師匠につくと、その作り方しかわからないですから」
こうした蘭情さんの粘り強い探究心があってこそ、好みや音楽性が異なる演奏家の要望に応え続けることが可能だったのだろう。

「どんな音になるだろう」ここから始まる

そんな蘭情さんの笛を中田も吹かせてもらった。
以前、和笛を吹かせてもらったときにはなかなか音が出なかったという中田だが、今回は蘭情さんの丁寧な指導で音を出すことに成功。
「スポーツ選手っていうのは、やっぱりさすがに勘がいいんですね」とは蘭情さんからのお褒めの言葉だ。

通常、笛は真竹なら真竹、篠竹なら篠竹を使って作られるが、中田は「真竹と篠竹を半分ずつ合わせて笛を作ったら、どんな音になるでしょうね」と興味津々。
「それはいいアイデアですね。今度やってみますよ」
蘭情さんの探究心は、今後もまだまだ発揮されそうだ。

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笛師 蘭情
千葉県東金市
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