神の宿る聖域、出羽三山
自然豊かな山々が印象的な山形県には、その山と人とが深く結びついた信仰がある。山形県中央部に位置する月山(標高1984m)、羽黒山(標高414m)、北部に位置する湯殿山(標高1504m)は出羽三山と呼ばれ古来より神の宿る聖域として信仰を集めてきた。それぞれ頂上に社殿を構え、その総称として「出羽三山神社」を成している。
出羽三山神社の歴史
出羽三山神社の社歴によると飛鳥時代、崇峻天皇の皇子である蜂子皇子が京都から日本海を越えて八乙女浦(現在の鶴岡市由良浜)に辿り着く。三本足の霊鳥に導かれて羽黒山を訪れ、難行苦行に末に「羽黒山大権現」が感応示現し、その後、月山、湯殿山を開きになられたことが始まりだとされている。
時代ごとに変化を続け、平安時代には「神仏習合」の影響を受けて仏教寺院が数多く建てられ一大霊場として知られるようになる。神仏別離が行われた明治時代以降から現在は神道として信仰が続いているのだ。
羽黒山・出羽神社へ
この日、中田は羽黒山・出羽神社を訪れ、権禰宜の中野雄一朗さんと共に境内に足を踏み入れた。
「三山それぞれに神社がありますが月山と湯殿山は冬の間、深い雪に閉ざされてしまいます。そのため羽黒山の山頂には三神合祭殿があり、いつでも出羽三山をお参りいただけるのです」と中野さん。
修験者用の白装束を身に着けた一行が目指すは2446段の石段の先にある「三神合祭殿」。境内の「随身門」を抜けるとそこからは羽黒山の神域とされているという。
出羽三山の文化財・建築物
東北有数の信仰の地である出羽三山には、多くの文化財や建築物が残されていた。杉の大木が無数に立つ参道を進むと五重塔が現れる。東北では最古の塔とされ国宝に指定されている木造建築だ。さらに、三神合祭殿に到着して中田が驚いたのは社殿が茅葺屋根だったこと。昔は寺院だった建物を社殿に改修しのだという。鐘楼と梵鐘もあり神仏習合・修験道の歴史を物語る存在をあちらこちらに見ることができるのだった。
羽黒山で現在も受け継がれる修験道
羽黒山修験道の大きな特徴は「三関三度」や「擬死再生」を体験するという考えだろう。羽黒山では“現在”を、月山では“過去”を、湯殿山で “未来”とされ、三山を巡る修行を通して一度死に生まれ変わることを疑似体験するのだ。
毎年8月には「秋の峰」と呼ばれる荒行が行われている。修験者は7日間山に篭り、寝食を共にして山々を歩き滝に打たれる。儀式の内容は古くから変わらず守り抜かれているという。秋の峰行は参加対象が男性に限られているが、このほかに行われる修験道場の体験には女性も参加しているとお話を伺った。
出羽三山神社は、山形の美しい山々が持つ魅力とそこに脈々と受け継がれる信仰を知ることができる場所なのだ。