山形県新庄市の「米の匠みのりガーデン」は、農薬や肥料を使わない「自然栽培」で米を育てる農家です。
そのフィールドは、さまざまな動植物が棲む自然豊かな山間地。かわいい我が子を育てるように
愛情を込めて稲と向き合い、自然の力を最大限に引き出しながらおいしい米を作っています。
にほんものストアの商品は全て【受賞ほ場限定】の希少なお米です。
2022年、「米・食味分析鑑定コンクール国際大会」「お米日本一コンテストinしずおか」といった国内最大級の米のコンクールで立て続けに金賞を受賞した「米の匠 みのりガーデン」。自然に恵まれた山形県新庄市の山間地にある水田を舞台に、農薬や化学肥料、有機肥料を使わない“自然栽培”で、世界が認めるおいしい米を育てている。
自然環境に恵まれ、米作りに最適な山形県新庄市
山形県新庄市は県の北東部に位置し、月山や神室山などの山々に囲まれた日本屈指の豪雪地帯。山から流れる雪解け水にはミネラルが豊富に含まれており、昔からおいしい米ができる土地として知られている。稲に実が入る登熟期に朝晩の寒暖差が激しくなる気候は稲にとって好条件で、日中に太陽の光を浴びて旨味成分を作り、冷え込む夜間から朝方に旨味を閉じ込める。
五十嵐家は新庄市の標高150メートルの山間部を中心に約15ヘクタールの水田を所有する米農家。江戸寛政の頃より代々米作りを生業とし、現在は8代目にあたる五十嵐成生さんを中心に家族で協力し農業に励んでいる。
米のおいしさに惚れ込み、一念発起して農家に
成生さんは秋田県の大曲市(現・大仙市)出身だが、大学進学を機に山形県に移住。卒業後、塾講師をしていた時に妻の恵利子さんと出会い、婿に入った。
成生さんは農家ではなかったものの、実家が仕出し料理屋を営んでいたため、おいしい米は食べ慣れていた。しかし、初めて五十嵐家の米を食べた際、そのおいしさに衝撃を受けたという。「後継者がいないので、私の代で離農しようと思っている」という義父の言葉を聞き、成生さんは「こんなにおいしい米が作れるのに辞めるなんてもったいない。自分が継いで、この米のおいしさを次世代に残していこう」と決意し、就農。8代目となり、農業ライフをスタートさせた。
人間の自然なサイクルで生きる幸せ
五十嵐家の稲作スタイルは、代々農薬や化学肥料を使用する慣行栽培。農業未経験だった成生さんは、義父から教わりながら農機具の使い方や作業の仕方などを1年かけてゼロから学んだ。機械の運転が好きなこと、自分次第で自由な時間がとれること、自分で勉強しながら改良していけることなど、成生さんの性格にフィットすることが多く、農業こそ天職だと感じたという。フィールドである山間部の田んぼにいれば動物の声が聞こえ、風が通れば四季の移り変わりを肌で感じることができる。早朝5時前に起きて作業をはじめ、日暮れとともに作業を終える。そんな自然のサイクルで生きている感覚が成生さんにとって新鮮で幸福な時間だった。
自らの手で販路を切り拓く
とはいえ、幸せなことばかりではない。成生さんは五十嵐家を継いで、初めてひっ迫した経営状況を知る。代々続いているし、順調だと思っていた経営だが実際はカツカツで、早急に改善が必要な状況だった。
「もっと収益を上げなければ生活すらできなくなってしまう。それなら、販売を業者に頼るのではなく、自分たちで販路を開拓していったら良い」と考え、まず手始めに地域で行われていたマルシェに参加。このとき、来場者がどんな商品を売っているのかがわかるように「米の匠 みのりガーデン」という屋号をつけ、自分たちの手で直接、米を販売をした。その結果、おいしいと評判で売れ行きは好調。消費者の声も直に聞くことができ、独自の販路開拓に大きな手応えを感じた。
「幼い子どもに食べさせたい」そんな気持ちで始めた自然栽培
塾講師をしていただけあって勉強熱心な成生さんは、農業に関するさまざまな勉強会に参加。学びを深めるとともにほかの農家との繋がりを広げていった。そんな中、大きなターニングポイントが訪れる。自然栽培を行っている農家との出会いだ。
五十嵐さん夫妻はその当時、子育てをしていたこともあり、なるべく安心で安全な食べ物を子どもに食べさせたいと考えていた。そのため、農薬を使用せず、作る側の健康にもつながる自然栽培は、消費者と農家、双方のためになる最善の栽培方法に思えたのだ。
一般的には米の食味向上や病気予防のために、農薬や肥料を使用する慣行栽培が普及しているが、自然栽培ではそれらを加えずに自然の力だけで作物を育てる。言うは易しだが、良い米作りのために開発された農薬や肥料をあえて使用せずに米を作ることは決して簡単なことではなかった。
もちろん、いきなりすべてを自然栽培にするわけにはいかないから、テニスコート5面ほどの広さである10アール程度の小さい田んぼで山形県産品種「はえぬき」の自然栽培に挑戦。しかし、元々背丈が低い性質のはえぬきは自然栽培では丈が伸びきらず、コンバインで刈り取る際に穂が落ちてしまい、収穫すらできなかったという。そこで、翌年は背丈があり食味も良いコシヒカリで再チャレンジをした。
大変な除草作業にも丁寧に向き合う
手押し除草機を使い、田んぼの隅々まで丁寧に除草している
しかし、成生さんたちがはじめた自然栽培では除草剤を使用しないため、みるみる生い茂る雑草をどうやって取り除くかが大きな課題となる。
義父は、方針に対してとやかく言わず自由にさせてくれる人だったから、自然栽培をはじめたことは事後報告で良いと思っていたが、草が生い茂る水田を見た際には、さすがの義父もショックを受けていたという。それでも自然栽培を続けたいという想いを汲んでくれた義父の期待に応えるよう、五十嵐さん夫妻は精一杯の努力をした。例えば、稲の根は傷めないように手押し除草機で除草する。土に酸素を行きわたらせるよう足を踏み入れてかき混ぜながら作業する大変な仕事。最初は10アールからはじめた自然農法の水田も、技術の向上とともに徐々に水田面積を広げ、現在は東京ドーム4分の1ほどの広さである1.2ヘクタールにまで拡大した。しかし、その広さともなると1回の除草作業で24〜36時間かかる。それを1シーズンで3回行い、さらに残った草は手で1本1本摘み取る。暑さや寒さから稲を守るため、水量の細かな管理も必要となるから、慣行栽培に比べたら、作業は圧倒的にハードだ。
全国規模のコンクールへの挑戦
こうして、粛々と自然栽培を続けてきたみのりガーデンに好機が訪れる。「米・食味鑑定士協会」の会長が新庄市に講演に訪れたのだ。その際、みのりガーデンの作った「自然栽培コシヒカリ」の食味値を計測。一般的に食味値が70以上で十分においしい米といわれているが、なんと、みのりガーデンの米の食味値は85以上。すぐさま、同協会が主催する「米・食味分析鑑定コンクール 国際大会」への出品を勧められた。早速、慣行栽培の米と自然栽培米の両方を出品したところ、自然栽培の米の数値が圧倒的に高く、ふたりは自然栽培の大きな可能性を感じたという。最初の年は一次審査すら通過できなかったのだが、それから毎年高品質の米を生産できるよう研鑽を重ねていき、その結果、みのりガーデンの自然栽培コシヒカリの食味値は90を超えるまでになった。
10年目にして3品種で金賞を受賞
そして、自然栽培をはじめて10年目、ついに「米・食味分析鑑定コンクール 国際大会」で金賞を受賞した。その後は、周りの人たちの勧めもあり、「お米日本一コンテストinしずおか」へ出品。つや姫、コシヒカリ、ゆうだい21の3品種が金賞を受賞した。また、金賞の中でもひと握りしか認定されないという「東洋ライスの世界最高米の原料米」にも認定され、これをきっかけに全国的に知られる米農家となっていく。
農業を志す若者を増やしたい
炊きあがりのつやや香り、味が良いみのりガーデンの米は、食べる人を笑顔にするパワーがある。それは、成生さんのたゆまぬ努力の結果だ。全国の自然栽培農家と情報交換して技術を磨き、丁寧な除草作業や自家採種といった地道な作業を続けることで年々おいしさが増している。それが食味という数値になって表れ、素晴らしい賞に結びついたのだ。成生さんの次なる目標は、「『米・食味分析鑑定コンクール 国際大会』でダイヤモンド褒章を受賞すること」。ダイヤモンド褒章は、このコンクールで5回以上金賞を受賞し、かつ3回連続総合部門金賞を受賞した生産者に贈られる「最高峰の米作りの匠」の証だ。「この賞を受賞することで、農業という仕事に憧れ、農家を志す若者が増えたら。農業の魅力を自分の後ろ姿で伝えていきたい」と話す成生さん。今後ますます栽培技術を向上させ、農業界の未来を明るく照らしていく。
花火の町、秋田県大曲市(現・大仙市)出身で大学進学を機に山形へ。縁あって米農家に婿入りしました。実家では両親が仕出し屋をしており、普段からおいしいご飯を食べていました。しかし、五十嵐家のご飯を初めて食べた時、そのおいしさにものすごく感動し、「自分も人を感動させられるようなお米を作りたい!」と強く思い八代目になりました。私にとって、農業は子育てのようです。毎日田んぼに通い、稲の表情を観察していますが、稲が気持ちよさそうに育っていると幸せを感じます。農薬も肥料も使わず、自然の中ですくすくと育った我が子のようなお米をぜひ皆さまに味わっていただきたいです。