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宮水使用の白鹿
灘の酒がうまい理由の1つに、六甲山系の湧き水が挙げられる。西宮市の水脈から湧くその水は、西宮の水、略して「宮水」と呼ばれ、清冽で甘美な味が特長である。ここ「辰馬本家酒造」も、宮水を使っている酒蔵の1つ。「白鹿」といえば、酒好きでなくとも知っている日本酒のブランドだが、その白鹿を製造している酒蔵である。
宮水との出会い
「辰馬本家酒造」の宮水との出逢いは、江戸時代の1662年にまで遡る。初代・辰屋吉左衛門(当時の屋号は「辰屋」だった)が邸内に井戸を掘ったところ、宮水が湧き出し、それをきっかけに酒造りを始めたのだとか。ところが宮水は、井戸を掘れば必ずいきあたるというものではない。そのため、灘のほかの酒造家から懇願されて、辰屋ではこの宮水を販売したそうだ。現在の白鹿にもある、張りのあるすっきりとした飲み心地は、この宮水なくしてはありえない。
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科学的に証明された宮水の特徴
当時は、宮水で造る酒がなぜ旨いのかわからなかったが、今では科学的な調査によってほかの醸造用水との違いが明らかにされている。宮水には、酒がもっとも嫌う鉄分がきわめて少なく、硬質でカルシウムに富み、適度な塩分がある。そのうえ、酵母の繁殖を助け、発酵を促すリンとカリウムが多く含まれているのだ。
科学的な知識もないのに、宮水をききわけた灘の先人たち。自然とともに生きてきたかつての日本人の感性の鋭さには、驚かされるばかりだ。