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名産地・唐津で代々作陶に励む「隆太窯」

名産地・唐津で代々作陶に励む「隆太窯」

自然に囲まれ、隆起に富んだ敷地内には小川が流れ、解体した古民家の家屋の一部を使って建てたという作業場やギャラリーが並ぶ。観光用の庭園のように手入れが行き届いているわけではない。目に入るのは、自然のままの雑木や雑草。佐賀県唐津市の唐津焼の窯元「隆太窯」で、吹き抜ける風を感じると、それだけで心が安らぐように感じる。敷地内には、大きな登り窯も見える。現在、焼き物の現場ではガスや電気の窯が主流だ。
「最近はうちでもほとんどはガス窯を使っています。登り窯をつかうのは年に5~6回。“歩どまり”は悪いんですが、炎の動きで思いがけない作品ができるという楽しさがあります」(中里太亀さん)
この隆太窯は、唐津焼の人間国宝にもなった十二代中里太郎右衛門 中里無庵氏の5男である中里隆さんが開いた。訪問した日、隆さんは不在だったが、息子の太亀さんと孫の健太さんが作業場でロクロを回していた。父子ふたり、特に言葉を交わすわけでもなく作業に打ち込む。作業する音だけが聞こえてくる静寂な空間と、そこに流れる空気がとても心地よい。
「いまの季節はいいですけど、夏は暑いし、冬は極寒ですよ(笑)。雪が降り込んでくるなかでロクロを回していることもありますよ」(中里さん)

計算を超えたとき、そこに唐津焼ならではの温かみや手触りが生まれるのだろう。

中里さんは言う。
「焼き物は使ってなんぼだと思っています。飾って眺めるようなものではなく、生活のなかでちゃんと使われるような器をつくっていきたい」
その作品は、使い勝手も考えられ、決して高価ではない。それでいて生活を豊かにしてくれる温かみ、手触りを持っているからうれしい。

唐津焼は、佐賀県唐津市を中心に作られる焼きもので、諸説あるが1580年頃から作られるようになったと言われている。使用する土の性質・釉薬・装飾の技法も様々あって、茶の湯の世界では「一楽二萩三唐津」とよばれ、茶人にも愛用されてきた一方、“用の美”と呼ばれる日用的な器も多くつくられ、今でも「食と器の縁結び」をテーマにした唐津やきもん祭りが開催されている。

ちょうど2日後には窯焚きを行うというので、火入れを見学させてもらうことになった。火入れが行われるのは夕方。しかし準備は午前中から始まる。成形された器を敷地内の登り窯の中に隙間なく詰め込んでいく。置く場所によって炎の動きや温度の上昇速度が異なることを計算に入れながらの作業だ。ぎっしりと詰め込むと、入り口を封じる。時間がくると、窯のスタッフと見学のわれわれにも酒器が回され、窯焚きの成功を祈って乾杯。火が入り、1200度まで上がったら、温度が下がらないように薪を焚べ続ける。夜中も誰かが窯のそばにいて、小山のように積み重なった薪がすべて灰になるまで焼き続ける。
「窯の中は、どんなに計算してもしきれない。だから面白いし、やめられないんです」(中里さん)

ACCESS

隆太窯
〒847-0825 佐賀県唐津市見借4333番地1
TEL 0955-74-3503
URL http://www.ryutagama.com