青磁の色が美しい陶器
モダンな雰囲気が漂う端正なフォルム、ゆったりとやさしい表情。そして青磁の透き通るような色と赤い土で色付けされたひび。自然と目に入ってきて、グッと引き寄せられる。それが志賀暁吉さんの陶器の特徴だ。
窯元の家に生まれて
志賀さんは2007年に史上最年少で日本陶芸展の大賞を受賞した注目の青磁作家。しかし陶芸の道を目指した理由は「何となく、というか仕方なくという感じですかね」と正直な胸の内を話してくれた。福島県浪江町に伝わる相馬焼の窯元の長男として生まれて、陶芸の世界に入った。そして、自身は伝統という枠にとらわれることなく、大胆な発想を持ちながら陶芸に取り組んできたのだ。
窯のくせを知らないとできない仕事
東日本大震災とそれに伴い発生した原発事故で福島県浪江町は、取材した2012年12月当時は避難区域に指定されていた。もともと作家活動をしていた実家のある浪江町には、道具もすべて置いたままだ。
「やはり使い慣れた道具でないと作品には影響がでますか?」と中田が質問をする。
すると志賀さんは「もちろん。それとともに、やっぱり焼き物は窯が大事なんです」と言う。
「特に私のやっている青磁は還元を安定させる必要があるので、窯のクセを知らないとできないんです。同じ窯で何回も焼いて、失敗を繰り返すなかで安定したものを見つけ出していくんです」そのため、現在は作家活動がなかなか難しい状況にあるという。住居と工房を兼ねた移住先を探しているが、もし見つかったとしても、最初に一年は試し焼きに費やすことになるだろうと話してくれた。
これまで以上の作品を作りたい
志賀さんは当時、避難生活を送っていた。結婚してご家族もいるので、どうやって暮らしていこうかと悩む日々が続いたという。「作家活動はあきらめて、別の仕事で働こうかと考えた時期もありました」と志賀さん。
それでもやはり作家としての道を模索している。支えてくれたのは、志賀さんの作品を待っているお客さんや知り合いの作家さんたちだった。現在は手先の感覚をなくさないように土に触れ、友人の工房でロクロを回している。
「完全復活して、これまで以上の作品を作りたいです。これから苦労しても、時間がかかっても、作家として復活することが、支えてくれているお客さん作家さんへの一番の恩返しだと思っています」最後に力強くそう語ってくれた。