力強さと繊細さの陶芸
陶芸家の百田輝(ももだひかる)さんと陶芸家の林亜美(はやしつぐみ)さん、おふたりが制作を行う工房を訪ねた。まずはおふたりの紹介を。百田輝さんは、1961年徳島生まれ。東京芸大工芸科を卒業後にヨーロッパに渡り、2年をかけてさまざまな国を巡った。日本に帰国してから、埼玉県朝霞市の「丸沼芸術の森」で作陶を始める。
その作品は独特のフォルムを持ち、器が、どこか大きく構えているかのような存在感がある。けれども、ふと花が刺さっている花挿しを見ると、実に自然な風景として目に入り、不思議な気持ちにさせてくれるのだ。陶芸の“土”を感じる厚みと表面の模様や微妙な釉薬の変化が調和して力強さを感じさせる作品だ。
淡い色の優しい器
林亜美さんの作品は、均整のとれた美しい形と、その表面にピンクや淡いブルーといった優しい色合いが広がる作品だ。作品をよくよく見ると、絵付けや象嵌で描かれた模様は丸い皿の中に四角が、四角の中に、草花や輪が描かれている。まるで色と色の組みあわせを楽しんでいるかのようにも見える器は、林さんならではの表現に感じられた。器は個性を持ちながらそれでいてやはり、食卓には間違いなくマッチする器だ。作風は異なるが百田さん同様に、使うことで風景になじむ不思議な感覚に陥る作品かもしれない。
林さんはその作風が評価され、これまでに伝統工芸新作展や神戸ビエンナーレなどに入選を果たし、個展を開催し好評を博している。
土をこねてろくろを回す
中田もさっそく器づくりをさせていただくことになった。こうした体験をさせてもらうときに中田がいつも頭を悩ますのが「自由に、好きなものを作っていいですよ」というとき。例えば絵付け体験でも、「好きな柄を描いてください」といわれると「何を書けばいいんだろう」と首をひねってしまう。そう話すと「たしかにね」と百田さんはうなずいたが、続けて「気楽ですよ。好きなように」と言ってくれた。
では、仕切りなおして挑戦だ。そこで出してくれたのが土の塊。今回は土をこねるところからやろうということになった。「あ、それだと強すぎるかな」と教えてくださり、ときには「あ、僕のやり方と逆だな」と自分も土をこねてみる。終始そんなやり取りが続く。「ろくろは練習が必要なんですよ。何回もやって身体で覚えていくもの。自転車と同じ。でも乗れちゃえば同じ。みんな同じなんですよ」。ろくろを回しながら、シンプルにひとつひとつ話をする百田さんの教え方がすごく印象的だった。そして出来上がったのが、ビールグラスには少し小さいぐらいのカップ。なんとか形ができあがり、一同ホッとした瞬間だった。
お二人は陶芸教室も開いている。土に触れ、作陶を知ることで、作品の見え方も変わってくるのではないだろうか。それぞれの制作活動を行いながら、多くの人に陶芸の魅力を伝えているのだ。