巨匠にも愛された酒造り「森島酒造」/茨城県日立市

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海辺の蔵の酒造り。

茨城県日立市にある森島酒造は明治2年創業、140年の歴史を持つ酒造だ。長年に渡り南部杜氏による酒造りを行っており、現在は6代目の森嶋正一郎さんが蔵元杜氏として酒造りを担っている。 蔵から海まではわずか数十メートルの距離。目の前が海という国内でも最も海に近い場所に蔵があり、波の音や海風を感じる環境だ。
仕込み水は蔵の井戸から汲み上げる。阿武隈山の伏流水の流れにつながる地下水はミネラル分を多く含み、やや硬質の水質が特徴だとお話を伺った。 「硬質の水は発酵が強く、放っておくと走るので落ち着けることが大事だと思っています」と森嶋さん。この水の特性を生かし、”魚に合う食中酒”を造るというひとつのテーマを掲げる。料理とのバランスを大事にし、飲み飽きない旨い味わいを目指している。

「大観」という名を冠す。

森島酒造では「大観」という名の銘酒を造っている。茨城県の出身である日本画の巨匠・横山大観氏は大変お酒を好む方だったことから、森島酒造とは長いお付き合いがあったのだ。そして、名前をいただき昭和28年に「大観」というお酒が生まれた。ラベルには横山大観氏の絵がプリントされている酒もあり、「すごいラベルですね。」と中田も驚いた様子だ。
酒造りに使用する酒米は、山田錦は兵庫県産のもの、茨城県産の美山錦・ひたち錦は契約農家の栽培した減農薬米を使用して、さまざまなニーズに合わせた酒造りにも取り組む。

取材の際には、新しく挑戦した雄町で造るもろみを拝見させていただく。「難しいけど、よく味が出る。」と、どこか嬉しそうに語る森嶋さん。 「これからどんなことに挑戦したいですか?」という中田の質問に、森嶋さんはこう答えた。「ひたち錦という茨城県産の酒米があります。味が出にくいんですが、それを引き出して形にしたい。極めたいですね。東京に出荷するときにも、茨城くさいと感じるような酒を造りたいです。」

東日本大震災からこれまで。

2011年3月11日の東日本大震災とその後も続く地震は、酒蔵に大きな被害があった。
「もう酒造りは出来ないかもしれないとも思いました」と5代目の森嶋鎮一郎さんは振り返る。醸造中のタンクの酒や瓶詰めしてあった商品、合わせて約2000Lがだめになった。「酒もそうですが、なにより、建物の被害が大きかったです」
第二次世界大戦の戦火を受けて蔵が全焼した際に建てなおしたという重厚な大谷石造りの建物。醸造蔵とビン詰め蔵は、地盤のズレによって建物にヒビが入り「大規模半壊」と認定されてしまう。それは、二次被害の危険があるため修理するか、解体しなければならないというもの。大谷石を使う建築技術が特殊であったことから社寺専門の建築業者に依頼し2ヶ月半かけて修復を行った。
この困難を乗り越えている間にも、田んぼではすくすくと稲が育っていた。2011年の米は出来も良く、酒の発酵も順調だったという。こうして、取材の際にも様々な酒をいただくことができた。森島酒造では挑戦を続ける酒造りが行われているのだ。

ACCESS

森島酒造株式会社
茨城県日立市川尻町1-17-7
URL http://www.taikan.co.jp/
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