「加藤作助」という陶芸家
愛知県瀬戸市。いうまでもなく瀬戸焼のふるさとである。そのなかでも赤津地区は、陶祖・加藤四郎佐衛門景正に続く作家が多く残っている。そのひとつが「加藤作助」という一門。作助を名乗ったのが、江戸時代後期のことなので、150年以上続く名門である。
今回工房に伺いお話を聞いたのは、第五代の加藤作助さん。東京芸術大学大学院で陶芸を学んだ後、生家である作助工房で作陶活動を始めた。江戸から続く工房で伝統をみっちりとしこまれたのだ。 代表的な作風は緑色の釉薬が特徴の「織部」の器。ただ加藤作助さんは、それだけにとどまらず、つねに新しい試みにチャレンジし、独自の世界を確立していく。そのひとつ、陶器の表面に象嵌を施した作品には、「陶磁器でも象嵌があるのですか?」と中田も驚いた。 加藤作助さんは日本伝統工芸展42回連続入選など数々の賞を受賞し、誰もが知るところとなった。そうした作陶活動の一方、愛知県立芸術大学の陶磁専攻設立に携わり、以後定年退官するまで教授として指導するなど、後進の育成にも力を注いでいる。
変化する瀬戸焼
中田は、器に「蚊帳布(かやぬの)」で模様をつける作業を体験させていただき、絵付けを施す。 「蚊帳目」をつけることによって、陶器の表面は素朴でやわらかな質感を纏うのだ。この「蚊帳布」は、麻で作られた古い蚊帳を利用するのだが、現在では生活環境の変化や蚊帳の素材の変化により、手に入りにくくなっているとお話を伺った。 また、工房では20年ほど前まで使っていたという今では珍しい「石炭窯」も拝見させていただいた。この「石炭窯」は、瀬戸焼の典型的な単独窯。加藤作助さんのご子息である加藤圭史さんが小学生のころは、瀬戸の街のなかには「石炭窯」の煙突が数多くみられたのだと話してくださった。 こうした窯が姿を残すのも、瀬戸焼の歴史を感じる出会いであった。