茶葉がお茶葉になるまで
望月庄司さんはお茶を栽培するお茶農家であり、製茶までの全工程を農園で行っている。
もっとも人気の商品が「さくらかおり」。桜の葉のようなふわりと優しい香りが漂う逸品だ。
お茶畑の茶葉が、わたしたちが普段急須に入れる「お茶っ葉」になるまでにはいくつもの工程を経なければならない。畑から摘み取ってから、まず行うのは、蒸熱。生葉を蒸すことで酸化酵素の働きを止める。これで発酵を防ぐのだ。
そのあと、粗揉機、揉拾機、中揉機、精揉機の順序でお茶の温度は人肌(人間の体温とほぼ同じ)に保ちながら、内部の水分を徐々に表面へ揉み出し、また、茶葉の表面が乾きすぎないように調整しながら約4時間かけて熱風で乾燥させていく。ここまでの作業で加工する人により形状・色択・味・香りの違いがでる。
茶師 前田文男が絶賛する茶葉
最後に乾燥機に入れて、お茶の中の残りの水分を5%前後に調整するが、このとき温度が高いと火の香りがしてしまうことから注意が必要なのだという。それからさらに、選別やブレンドなどの作業が行われて、商品になる。
「お茶の製造は、生葉の品質以上の製品を作ることは困難ですので、いかに品質の良い生葉を造ることが重要です。次に、その品質を落とさないよう特長を出し製造するかにかかっています。」と、望月さん。
さて、中田が望月さんに見せていただいたのは、荒茶というもの。
荒茶とは、生成工程の揉捻、乾燥までを終えた状態をいう。火入れをする前の、生の茶葉だ。
望月さんを紹介してくれた茶師の前田文男さんが、その荒茶を見て、「ほんとうに見事です。茶葉の一本がここまで長く均等に伸びているものはない。」と感嘆していた。
中田はそれを手にとり、口に入れる。「おいしいよ。香ばしい。しっかり味がある。」
お茶にしていただいてみると、とてもマイルドな味。
「火入れという作業は、問屋さんが茶葉をみて、少し強く火を入れたほうがいいなと判断したりして、お茶に特徴をつける作業なんです。でも、荒茶でも美味しく飲むことができるんですよ。」と望月さんは説明してくれた。
望月さんの荒茶は「金色透明(きんしょくとうめい)」と呼ばれる黄味がかった水色(すいしょく)。
いつも飲むお茶とはまた違う、生のお茶の味。
荒茶はほとんど市場に出回ることはない。貴重な体験をさせていただくことができた。