日本でも有数の名人が作る上品な「天竜茶」カネタ太田園 太田昌孝さん/静岡県浜松市

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自然が生み出す高級な「天竜茶」

お茶で有名な静岡では、産地ごとにブランドがあるという。沿岸は気候が温暖であるのに対して、山間部は寒暖差が激しい。こういった気候や風土の違いと、栽培方法や製造方法、品種の違いなどにより、県内には大小20以上の生産地があると言われている。中でも有名なのは静岡三大ブランドと言われる本山茶、川根茶、掛川茶と、太田さんのもとで育てている高級茶で有名な「天竜茶」ではないだろうか。

天竜茶は、天竜川の支流・阿多古川上流に沿った山間部で栽培されており、最上位品質と言われる。浅蒸しの普通煎茶が多く、濁りなく透明で綺麗な色合いや、香り高く濃厚なのに上品ですっきりとした味わいが特徴だ。阿多古川は中田も驚くほど水の透明度が高く、「平成の名水百選」にも選ばれた清流だ。

カネタ太田園の畑は県内の茶園の中でも標高が高く、茶栽培に適した場所にあり、自家製完熟たい肥などを使い、土づくりに力を注いでいる。

「天竜茶は、生産量は少ないけど味と香りが格別。うまみにもいやみがないんです。しかも秋になっても味が逃げないから長く楽しめる。このあたりは、高地にあって水も空気もきれい。寒暖差がいいという人もいるけど、うちの場合は土からこだわっているからね。土作りだけでも7~8年かけることもあります」と太田さんは語った。

数々の受賞歴を持つお茶づくりの名人

実は太田さんは、静岡県はもとより、全国に名を知られるお茶づくりの名人である。品評会での受賞は数知れず、2008年の洞爺湖サミットでは、各国首脳に太田さんの天竜茶が振る舞われた。さらに、黄綬褒章受章や天皇賞、農林水産省など、数々の賞を受賞している。そんな太田さんも昭和15年生まれでもう80歳を超えるはずだが、山間の茶畑をいきいきと力強く作業する姿からは想像もつかない。お茶からは上品な味や香りだけではなく、作り手の活力もあふれているのではないだろうか。

お茶づくりへの熱い想い

近年では、阿多古川上流の地域で増えている放棄茶園を借り受けて、その茶園の土地に合った茶の品種を選び、栽培することを進めている。

「傾斜地にある畑だと、山側と谷側で性質が違うんですよ。そういう畑では大きな機械は使わず、手摘みや小さな機械で丁寧に刈り取る。同じ品種でも畑や土が違えば味も変わるんですよ。だからうちでは、畑にあわせて13~14品種を作っています」と太田さんは語った。

また一般的な茶農家は、刈り取った茶葉を業者や市場に出すだけだが、太田さんはここから自分で製茶し、販売まで手がける。小さな皿のような器に茶葉を少量盛り、そこに少しだけ湯をかける。茶の色は、緑ではなく黄金色だ。口に含んだだけで、ふわっと香りと旨味が喉の奥まで届く。かといって強い味かというとそうでもなく、やさしく体に染み込んでいくようだ

「すごく豊かな味。旨味がすごいですね」と中田が言うと、

「こうやってお茶をおいしいと言ってもらうのがいちばんうれしいんですよ。お茶の本来の味を伝えたいと思って、この仕事を続けています。だから火入れは控えめになんです」と太田さんが嬉しそうに語った。

太田さんによると彼の作る茶がおいしいのは、「朝日と畑の香りが残っているから」だという。確かに彼の畑で吸った空気は、ことのほか澄んでいたような気がする。

ACCESS

カネタ太田園
静岡県浜松市天竜区西藤平36-1
TEL 0539-28-0007
URL https://www.kanetaotaen.jp/
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