晩香窯で生まれる有田焼・白磁「白妙磁」
1600年代初期、豊臣秀吉の朝鮮出兵の際に日本に同行した陶工が有田の地で白磁鉱を見つけたことが佐賀県名物・有田焼の始まりだという。いまでも有田町を訪れると、たくさんの窯の煙突が並び、ゴールデンウィークに開催される「有田陶器市」には、100万人を超える観光客が訪れる。晩香窯の窯元として有田焼を作る六代目・庄村久喜さんは、独自の感性と手法で新しい時代の白磁、有田焼を追求している。
「白磁といってもその白の中に濃淡があります。白の中の白、白の彩りを見せていきたい」
一般的な有田焼の特徴は、白い磁肌と呉須 (藍色の顔料) で描いた染付け、ガラス質の上絵具を用いた華やかな赤絵があるのが特徴だ。しかし庄村さんが独自の感性と手法により編み出したオリジナルの白磁「白妙磁」は、伝統的な有田焼とはまるで別物。マグカップやお皿、湯吞みなど機能性はもちろんのこと、美しくなめらかなシルエット、独自の釉薬を用いたやさしくも華を感じさせるシルクのような色合い。昔ながらの和室はもちろん、現代的な洋室のインテリアにも似合うモダンさを感じさせる。
「有田焼の伝統を守りながら、現代の生活に溶け込むような作品を作りたい」
そんなフィロソフィーが作品にそのまま息づいている。地元で生まれ、地元で学び、そして地元で土をこねる。自宅のすぐそばにあるアトリエで彼は作品を作りつづけている。マスキングテープをつかうなど、その技法も独自に編み出したものだ。そこには相当な覚悟が必要なはずだ。だが、庄村さんの作品は、そんな覚悟を感じさせない。有田焼というブランドに頼らない、彼のような作家が生まれることで、秀吉の時代から続く伝統が守られていくのだろう。