木象嵌で描かれた歌舞伎役者
バードカーヴィング(野鳥彫刻)でも有名な内山春雄さんは、木象嵌の作品でも鳥の絵を多く制作している。
しかし、目下、夢中になっているのが「浮世絵」だ。
とくに、現代の歌舞伎役者を木象嵌で表現したいと思っているとお話を伺う。
「江戸の歌舞伎役者は浮世絵で残ってるじゃないですか。当時のブロマイドですよね。それが現代は写真が発達したから、“絵”は残ってない。だから、現在活躍してる歌舞伎役者の浮世絵を象嵌でやってみたいんです」
内山さんが話す歌舞伎役者の浮世絵木象嵌は、精密な“ブロマイド”そのもの。
なぜなら、厚い板に木を嵌めこみ、それを大型のカンナで削り出すことによって、何枚も同じ作品を生み出せるから。
「そのためには、まっすぐ木を入れなくちゃいけないんです。普通、木象嵌というと、傾斜を付けて木をうめ込むんです。でも私は垂直に入れる」
役者の髪の毛の一本一本まで、すべて木を嵌め込んで描き出している。
気の遠くなるような緻密さだ。
糸のこを駆使し、木を精巧に組み合わせる
中田が訪問するということで、内山さんはネームプレートを作ってくれた。
その作業を中田も手伝う。
糸のこをいれ、自分の名前を図案どおりに切り抜くのは大変難しい。
内山さんに手伝ってもらいながら、何とか作業を終える。
最後に、カンナに力を込めると、ひらりと一枚の絵が完成。
サッカーボールに中田英寿という名前をあしらったネームプレートだ。
内山さんから「これで完成」と、木製の名刺入れに貼ったものを手渡たされた。
「これが木っていうのが、本当にすごい。考えられない」と中田がいうほど、精巧で緻密な作品が完成した。