名だたるシェフを惹きつける「村上農園」が伝える、極上の熟成じゃがいもの魅力

名だたるシェフを惹きつける「村上農園」が伝える、極上の熟成じゃがいもの魅力

BUY この生産者の商品を見る

北海道の雄大な自然で育ったじゃがいもを村上農場にてじっくりと熟成させた「熟成じゃがいも」。最もおいしい瞬間を逃さないよう貯蔵、熟成された極上の逸品だ。全国の名だたるシェフを惹きつける、その“おいしさ”の理由を紐解く。


唯一無二の味わいを持つ「熟成じゃがいも」



北海道のほぼ中央、⼗勝平野の北部に位置する上士幌町(かみしほろちょう)。日本一の面積を持つ国⽴公園・⼤雪⼭国⽴公園の山裾にあり、面積の7割以上を森林が占める自然豊かな土地だ。


標高2000m級の山々が連なる北部に対し、村上農場のある南部は穏やかな丘陵地帯が広がる。内陸性の気候を有し、夏と冬、昼と夜の寒暖差が大きく、降水量も比較的少ないため、その地形と気候は農作物の生育に適する。涼しいながらも一年を通じて日照時間が長く、冬は「十勝晴れ」と呼ばれる晴天にも恵まれ、じゃがいもや豆類、長芋やゴボウ、キャベツなどさまざまな作物が栽培されている。


この豊かな自然と冷涼な気候のもと栽培されたじゃがいもをより一層おいしくするためにじっくり時間をかけて作られたのが、村上農場の「熟成じゃがいも」。じゃがいもとは思えないほどの甘みや食感にリピーターが続出し、全国から問い合わせが相次いでいる。代官⼭の人気イタリアンレストラン「TACUBO」をはじめ、恵比寿の「PELLEGRINO(ペレグリーノ)」、滋賀のジビエ割烹「蔓ききょう(つるききょう)」、九州・宮崎のフレンチレストラン「LE POTIRON(ル ポチロン)」など、全国中の人気店が、この極上のじゃがいもを求める。


品種によって異なる「旬」を熟成、貯蔵で調整



村上農場のじゃがいもの味に多くの人が魅了されるのは、農場自らが味を作っているから。そう話すのは農場長の村上知之さんだ。 “味を作る” とは、いったいどういうことなのだろう。


村上農場では約30種類のじゃがいもを栽培している。じゃがいもと言えば新じゃががおいしいと思われがちだが、品種によっては新じゃがのシーズンではない時期に味のピークを迎える品種もあるんだ、と村上さん


「そこで私たちの農場では、それぞれの品種を最もおいしい時期に出荷できるよう、貯蔵、熟成をすることにしました。収穫したものを一度倉庫に⼊れて冬を迎えさせます。冬を越して初めて出荷できる品種もあります」


コストや手間を考えると、秋の収穫後すぐに出荷したほうがいいに決まっている。しかし、じゃがいもの品種ごとに、最も味が“のっている”時期がちがうから、最高のタイミングに出荷することにこだわる。村上農場ではピークを迎えたじゃがいもについて“味の花を咲かせる”、と表現しているのだそう。


「早く出荷するか、熟成するかの見極めは、味の“のりかた”で異なります。わかりやすいのは糖化ですね。⽢くなったかどうかで判断できるので。基本的にはすべて“味”次第です。収穫してから1週間ぐらいで実際に味を見て、良し悪しを判断します。早いものは1週間、遅い品種だと6カ月ほど熟成して出荷していますね」


村上農場が出荷時期をずらし、品種に合わせた貯蔵、熟成にこだわりはじめたのは15年ほど前のこと。今のように食味で出荷時期を見極めるため、50種類以上もの多岐にわたる品種を食べ比べ、最適な時期を研究し続けてきた。総合的に、⽢み、粘り、粉質、⽔分率、アミノ酸といった指標をベースに、甘みだけに偏らない分析を続けてきた。加えて、栽培時の気候や収穫後の状態など、さまざまな過程を考慮して出荷の時期を見定める。じゃがいもの個性を引き出すためにあらゆる努力を続けてきたが、それは土づくりにおいても同様だという。


「もともと、上士幌町の土壌は⽕⼭灰が積もった⼟で、水はけもよく、じゃがいもを栽培するには適した軽い土質が特徴です。じゃがいも以外に、⾖、かぼちゃ、とうもろこし、⼈参、にんにくなどの栽培にも向いています。ただし、じゃがいもに限って言えば、⼟壌がアルカリ性に傾いていると『そうか病』と呼ばれる症状が出やすくなるので、じゃがいもの畑にはアルカリ分を多く含む石灰は撒かないよう気を配っています」


基本的には⽜糞や鶏糞、豚糞での土づくりを行い、農薬や化学肥料の使用を半分以下に抑えなければならないという特別栽培の基準をさらに下回って農薬は7割減、化学肥料は8割減を実現している。


顔が見える直販で北海道から販路を全国に広げる



村上農場の作るじゃがいもの魅力が全国に伝わったのには、販売のスタンスも影響している。生産者自ら販路を開拓し、出荷組合や卸業者を通さずに消費者と直接やりとりする方法は、現在では日本中に浸透しているが、村上農場では20年も前からそのスタイルを貫いている。


「きっかけは、当時この辺りであまり作られていなかった『北あかり』という品種のじゃがいもを栽培したことです。1年目の出来が、すごくよかった。それで北あかりを飲⾷店に出してみたら、評判がよかったんです。それで、もしかしたら直接販売するほうが魅力を伝えることができるんじゃないかと。それからだんだん直販の規模が⼤きくなっていきました」


とはいえ、いち生産者が独自で販路を拡大するのは簡単なことではなかった。そこで村上さんは積極的に⾷に関する勉強会に参加。野菜はもちろん、調味料や酒などを幅広く学んだ。

勉強会にはシェフなどの料理人も多く参加しており、それこそが村上農場の農作物の魅力を広めるきっかけとなり、全国各地への販路拡大へと繋がっていった。


モノづくりの使命感が農家としての誇り



村上農場をはじめて35年。安心して口に入れられる安全でおいしい農作物を作りたいと努力を重ね、現在45ヘクタール、東京ドーム約9.6個分もの巨大な農地で多くの野菜を栽培する農家に成長した。成長のきっかけとなったのは土質の変化に気づいたことだった。


「畑の土を踏みしめても、⾜の感触がすごく柔らかくなってきているなと感じます。トラクターで作業していても感触で明らかに⼟質が変化しているのがわかる。触ってみてもパラパラしていて、固まらないずにほぐれるような良質な土です。私が作っているのは、口に入るもの。少しでも安全なもの、品質のよいものを作りたいと思っています。そのためには⻑く畑を維持し、持続できるように考えなければいけないと意識しはじめました」


力仕事も多い農作業は、年齢を重ねるごとに過酷になっていく。年を重ねると農作業がきつくなり、後継者がいなければ離農する人も少なくない。そうやってまわりの農家も少しずつ辞めていった。現在、この地域に大きな畑が多いのは、残った農家がそれらの土地を購入していった結果に過ぎない。


村上さん自身、正直なところ、ビジネスとしての農業はまだまだ難しい部分があると感じている。コストもかかるし、課題も山積み。しかし、純粋に農作物の味を追求したいという熱意があるから、栽培法や熟成法の開拓に力を注ぐ。

もちろん、利益を得ることは大事だけれど、それだけを気にしていたら既存の枠の中にとどまっているだけで終わってしまう。だからこそ、⾃分のやるべきこと、使命感のようなものが自分を動かす原動力となり得る、と話す村上さん。


結局、モノづくりが楽しいんですよね。それで作ったものをお届けして、お届けしたものがどんな味だったとか評価いただくのが今⾃分にとって⼀番モチベーションになっています」


一番おいしいタイミングで食べてもらいたいからこそ、熟成という手段を見出すことができた村上農園のじゃがいも。その想いはこれからも村上さんを極上の味の追求へと突き動かしていくだろう。


ACCESS

村上農場
北海道河東郡上士幌町居辺東7線213
TEL 01564-2-4614
URL https://imomame.jp/