質と量に恵まれた北海道の赤土
陶芸家のもとに生まれ、自身も陶芸の道を歩んだ下沢敏也さん。市街地から約30分のアトリエは緑に囲まれ、制作に没頭できる場所だ。「北海道は焼き物産業は盛んな土地ではないと思われているが、実際には良質な土の採掘量は格段に多く、困ることはない」と話してくれた。2011年に北海道文化奨励賞受賞。作品は地元の赤土を用い、器制作のほかに空間造形も高く評価されている。土の質感を生かした作風で、土のもつ特性がインスピレーションを生みだすようだ。
鉄分の多い赤土の良さを生かした作風
鉄分の多い赤土。「精製した土よりも不純物が入った本来の原土がいい。手を加えず、土の良さを出したい」と下沢さん。朽ちていくことと再生というオブジェ制作のテーマは、土そのものの解釈につながっている。作品をいくつか見て、「ひび割れた表現がとてもいい」と中田も惹きつけられていく。ギャラリーの一画には中田もよく知る、織部焼があった。「自分らしさをどう表現するかが楽しい」と、10年ほど前から伝統的な手法のものと現代的なアプローチでの作品作りを平行して行ってきたという。器の色、質感から土の温かみがこぼれ出るようだ。
ろくろを回し、器作りを体験する
実際に土を揉み、ろくろを回して、作品作りを体験させてもらった。中田にとって土は少し硬いようで苦戦したが、「ちゃんと出来ていますよ」と下沢さん。ろくろは「経験がある人は手つきが違う」とほめられながら、スムーズに形が出来上がっていく。最後は器の表面を整える。形づくられた器の表面を仕上げるには「柔らかすぎるとできないので、ちょうど硬くなる前、生乾きの時がよい」のだと教えてくれた。