誰もが知っているお酒「八海山」
新潟といえば、米どころ。米どころといえば、酒。おいしい水にも恵まれて、新潟には多くの名酒蔵がある。
「県内に95の酒蔵があるんですけど、私どものところはまだまだ100年にも至っておらず、歴史的には比較的新しい酒蔵です」
そう、謙遜気味に話してくれたのは、八海醸造 取締役製造部長の南雲さん。でも、醸造している日本酒は、酒好きでなくとも知っている、あの「八海山」なのだ。
酒の味は“人”が決める
「酒蔵っぽくなくて、あの建物は何なんだろうって思った」と中田がいうように、八海醸造の蔵は近代的で「工場」といったほうが似合いそうな外観。建物のなかも、機械化できる部分は機械化を進め、合理的かつ安定した管理のもと作業を進めている。
だがやはり最終的には、酒の味は人が決める。中田が見学に伺ったときは、人の手でしかできない麹づくりの真っ最中だった。機械に任せたほうがいいところは、積極的に任せる。人にしかできないところは蔵人の経験を活かす。常に見据えているのは「できあがる酒の品質」なのだ。
料理を支える“酒”
南魚沼といえば、コシヒカリの産地だが、「コシヒカリは使わないんですか?」という中田の質問には残念そうに「実は酒には合わないんです。ねばりがあったりすると、なかなか難しいんですね」と答えてくれた。
八海山は五百万石を使うことで、クセがなく、優しい口あたりの酒に仕上げられている。「あまり酒自体に個性がありすぎると、たくさん飲めない。それからやっぱり飽きると思うんです。いくら飲んでも飲み飽きない酒というものを私たちは目指しています。また、食中酒としての酒ですので、料理が主体だとも思っています。酒は料理に合わせて飲むもの、どんな料理にも合う酒というのがいい酒だと私は思っています」その淡麗ですっきりした味わいが支持を受けて、「八海山」のブランドを保っているというわけだ。
この日は新しい発見があった。試飲させていただいときに、中田の手が止まった酒。それは米焼酎。
発酵の途中で清酒の酒粕を加えることで、吟醸酒のような香りがただようのだ。普通の米焼酎とはまた違った楽しみ方ができるということで人気を博しているという。また、もうひとつ人気を集めているのが、日本酒を造るのとまったく同じ製法の麹と米だけでつくった甘酒。高精白の米だけを使っているので、雑味がなくまろやかで上品な味わいの逸品だ。日本の料理は多種多様。八海醸造は、誰にも親しめる美味しい酒を造りながら幅広く「食文化」を支えている。