村上の自然があってこその“旨口”
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五百万石や高嶺錦などの酒造好適米の産地として知られる新潟県村上市に、宮尾酒造が蔵を構えてから、間もなく200年という時が経つ。宮尾酒造の顔ともいえるお酒「〆張鶴」の特徴は淡麗“旨口”。すっきりとした味わいでありながらも、しっかりと“味”が口に広がって残る。
中田も見学当日に、大吟醸「金ラベル」、純米吟醸「純」、吟醸酒「特撰」など、数種類の〆張鶴を試飲させていただいたが、一口飲んではゆっくり味わい、また一口いただき、〆張鶴の“旨口”を堪能させていただいた。この味を作り出しているのが、村上が生み出す最高の米と、鮭の遡上でも知られる三面川の伏流水。良質な酒米はもちろんのこと、きめが細かくすこしだけ甘さをもつ水が、すっきりなのにしっかりという“旨口”の特徴を引き出しているのだ。
いいものはいつの時代、どこの場所でも通じる
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「〆張鶴の名前がつく限りはどのお酒でも“うまい”と言っていただける酒造りをしたい」と宮尾酒造専務取締役の宮尾佳明さんは言う。さきほど言ったように、村上市は米も水も酒には最適な素材が手に入る。
しかしそれだけでは“うまい”酒は作れない。
「そのために徹底的に原料を吟味し、製造環境を整え、妥協しない品質へのこだわりを持ってやっています。酒造りにかける情熱と熱意、それから伝統を大切にしながら、少しでもいい酒を造ろうと挑戦することが、“うまい”酒を作り続けるためには必要だと思います」
つまり、造り手の想いがなければ “うまい”酒は作れないということ。現在でも全国に多くのファンを持つ銘酒「〆張鶴」。今後の展望を伺うと、“いいものはいつの時代、どこの場所でも通じる“という信念を持ち、日本酒に馴染みのない若い世代や、海外に対してもアピールしたいという答えだ。
日本酒好きだけでなく、次の世代へ。食に関する関心が高まる今だからこそ、様々な人の心を掴むチャンスかもしれない。
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