松江に育まれた菓子文化
京都、金沢と並び“菓子どころ”として有名な街、松江。
それもそのはず、松江は江戸時代の超一流の茶人・松平不昧(まつだいらふまい)公のひざもとにある城下町なのだ。
不昧公が茶人として活躍するにつれ、その城下でも和菓子の銘菓が数多く生まれ、「不昧公御好み」として名を馳せることになった。
彩雲堂は、その松江を代表する和菓子屋さん。相談役の伊丹二夫氏は16歳から和菓子づくりを始め、農林水産大臣認定の「フードマイスター」、労働大臣認定の「現代の名工」の肩書きをもつ名匠だ。
こだわりの手作業で作られる若草
人気店だけに、1日に約1万個もの生菓子を制作する。しかし、ほとんどの菓子づくりを機械に頼らず、手作業で丁寧におこなっている。
そのこだわりは、「不昧公御好み」のひとつ、「若草」にもあらわれている。「若草」は、不昧公がまとめた茶道の手引き「茶事十二ヶ月」で、春の茶席の主菓子とされた和菓子だ。柔らかでまったりとした舌触りの求肥(ぎゅうひ)に、薄緑色の甘い寒梅粉をそぼろ状につけて仕上げられた「若草」。
一番のこだわりは、奥出雲・仁多地方で取れる最良のもち米を使用し、石臼で水挽きして求肥粉にすること。機械で大量生産した求肥粉は使わないという徹底ぶりだ。
また、切り分けた求肥に寒梅粉のそぼろをまぶすのも、ひとつひとつ手作業で。季節ごとに微妙な変化をつけてふんわり仕上げるためには、職人さんの手でやるしかないのだ。
城下町散策のあいまに甘い和菓子で疲れをとるのもよし、中田と同じく「和菓子づくり体験教室」に参加して旅の思い出の1ページにするもよし、松江に行く前に取りあえずお取り寄せしてみるのもよし、いろんな楽しみ方ができるお店だ。