香り高く深い赤色の醤油を「八木澤商店」/岩手県陸前高田市

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東日本大震災から復興した醤油造り

創業1807年という歴史を持つ、醤油・味噌の醸造を行う「八木澤商店」は、陸前高田市に蔵や製造工場を持っていた。しかし、2011年の東日本大震災でその多くを失ってしまった。同じ陸前高田市での事業者はおよそ8割が震災で建物を失ってしまったのだ。そのため現在も街全体の復興作業が続けられている。今回は2012年夏に完成した八木澤商店の新店舗に伺い、社長の河野通洋さんに震災後のあゆみや現在の醤油造りについてお話を伺った。

震災直後、人がいなくては始まらないと考えた河野さんは、社員を雇用し続け、地域のボランティア作業を会社の事業にした。そして、5月にはOEMの手法で他県の同業者に醤油を造ってもらい、八木澤商店の醤油として販売を再開することができたという。
もともと地元の水産業や食品加工用に卸していた商品が多くあったが、地域全体が震災の被害にあってしまった。醤油を買ってくれていたお得意さんたちも大きな被害のなかで復旧の目処すら立っていないのが現実だった。
そのため、販売を再建するときに方向転換をしなければならなかったという。方向性を完全に県外に向ける、個人の顧客を増やすといった方向にシフトし、インターネットでの直接販売のお客様は震災前の3倍以上になった。

新しい環境でも昔の味に

現在、新しい工場、新しい設備での醤油造りを始めているが、これまでの味を取り戻すことは容易なことではない。その一因は蔵の環境だ。河野さんは「蔵の歴史のある杉樽に住み着いていた酵母、乳酸菌は科学ではまだ証明できていないものなんです」と話す。
「今新しい蔵では、醤油仕込みの真っ只中です。酵母や乳酸菌の影響について、これからはそれを自分たちで検証する必要があります。研究機関の協力が得られているというのはありがたいことです」
そして、新しくなった環境で、昔から変わらぬ技法を続けると話してくれた。
杉桶がステンレスになった。そういう環境の変化が目の前にある。それでも原点は変わらず昔ながらの濃厚な「利兵衛の醤油」だという。醤油造りの原点である、この味に近づけていきたい。この醤油と遜色ないものができればいいと力強く話をしてくれた。

もう一度、醤油で日本一をとりたい

醤油の決め手は味はもちろんのこと、香りと色も大事だと河野さんは話す。
「わたしたちの醤油の目指すところのひとつは“香りのゆたかな醤油”」。その言葉を証明するように昔からのお客様からは「魚などの焼き物に使うと最高だ」と八木澤商店の醤油は評判だ。また色は黒ではなく、深い赤。いい発酵が進むと赤が強くなるのだという。発酵によって醸し出されたうまみが強く出るのだそうだ。
これまで全国の品評会で農林水産大臣賞を受賞するなど、何度も日本一に輝いた八木澤商店の醤油。
「過去に日本一をもらって、そこに自信も誇りもあった。いまはまずそこに戻れるようにがんばる。そうしてもう一度、日本一をとりたい」と河野さんは話してくれた。
現在、陸前高田市内に新しい蔵と販売店がオープン。営業を再開した地元企業や、様々な業種とのコラボ商品開発にも力を入れている。そしてめどがたてば、味噌の醸造も再開したいと意欲を見せてくれた。

ACCESS

株式会社八木澤商店
岩手県陸前高田市矢作町字諏訪41
URL http://www.yagisawa-s.co.jp/
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