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淡路島「本福寺水御堂」
淡路島北東部に位置し、大阪湾を一望できる小高い丘の上に、本福寺はある。淡路四国59番霊場にもなっていて、お遍路さんの鈴でにぎわう寺院だ。
平安時代に創建されたという歴史の長い寺院だが、水御堂(みずみどう)と呼ばれる新本堂が建てられたのは1991年のこと。安藤忠雄氏の建築によるものだ。
まず、新本堂へとつながる雑木林のアプローチを抜けると、俗世と聖界を仕切るためのコンクリートの壁が現れる。
それを回り込むようにして内部へ入ると、なんと中が楕円形の池になっている。池には睡蓮が浮かび、季節になると白や赤の花を咲かせ幻想的な風景で出迎えてくれる。なかには、約2000年前の地層から発見され、栽培された大賀蓮も浮かんでいる。
そしてユニークなのは、その池の中央にある階段だ。本尊の薬師如来が鎮座する本堂へと向かうには、池を割るようにして作られているこの階段を降りなければならない。夕方になると、本堂には朱色の夕日が差し込みよりいっそう荘厳な雰囲気に包まれる。本堂から出るときには、下っていった階段を当然上ることになるのだが、そのとき、目の前には空だけが広がっている。その光景が、どこか非現実を感じさせ、悠久のときを思わせる。