NIHONMONO「にほん」の「ほんもの」を巡る旅マガジン

江戸・東京の地酒 豊島屋酒造株式会社

江戸・東京の地酒 豊島屋酒造株式会社

東京にも地酒と呼べる日本酒がある。東村山市にある豊島屋酒造は、昭和12年からこの地に蔵を構え、明治天皇の銀婚式をお祝いする願いを込めた『金婚』や『屋守(おくのかみ)』など地域に根ざした酒造りを続けている。

その歴史は今から400年以上前の1596年、鎌倉河岸(かまくらがし)。初代豊島屋十右衛門が酒屋の一角で一杯飲み屋を始め、大繁盛。これが「角打ち」の起源ともされ、同時に、江戸では草分けとなった白酒の醸造に着手したのがはじまりである。白酒とは蒸したもち米と米麹をみりんに混ぜて仕込んで、約1カ月間熟成させた後、すりつぶして作るお酒で、初代豊島屋十右衛門の夢枕にお雛様が立って、その作り方を伝授したと言い伝えられている。その夢がきっかけでひな祭りの時期に白酒を販売するようになり、それが江戸中の評判になったのだそうだ。その後分社化により豊島屋は豊島屋本店(東京都千代田区)となり、醸造元として豊島屋酒造が設立された。

「私は他の会社で働いていたんですが、27歳のときに祖父が倒れたのをきっかけに蔵に入りました。広島の酒類総合研究所で3ヶ月研修をしたんですが、まったく自分の酒造りができず、それから酒販店や仲間の蔵元を訪ねまわって、勉強をしてきました。とにかく東京の地酒を造りたかった。それで試行錯誤して生まれたのが『屋守』です」(豊島屋酒造 代表取締役田中孝治)

目指したのは“ここでしか呑めない”酒。水は武蔵野台地の地下150メートルから汲み上げ、米や酵母もいろいろ試した。そして気付いたことがある。
「当たり前なんですが、結局造り手で味が決まるんですよね。自分自身の技術を磨いていくしかない。『屋守』は少量生産ですが、なるべく手作業にこだわって、おいしい酒を造りたいと思っています」

ラベルにはヤモリのイラストが描かれた『屋守』。
そのまま読めば“やもり”となり、蔵を守る存在になってほしいという思いが込められている。

手間暇をかけて仕込んだ酒は、ろ過も加水もせずもろみを搾ったあとそのまま瓶詰される。飲んでみると程よい甘みと、飲みやすい口当たり。これならいろんな料理との相性も良さそうだ。信頼のおける特約店でしか買えないこの酒は、蔵を守り続けていく気持ちと酒を通して繋がる人やお店の繁栄を守りたいという願いから田中さんが名付けた。売ってくれるお店に恩返しがしたいと蔵元でも販売していない。

「酒好きだけが飲む酒だと広がりがない。海外もふくめもっとたくさんの人に日本酒の魅力、おいしさを知ってもらいたいと思っています」
そんな田中さんは「人と人の縁を醸す」力がお酒にはある、と試飲スペースを設けた蔵を積極的に開放し、夜の酒蔵見学や月一回開催「角打ち,happy hour 田中屋」、年一回開催の「TOYOSHIMAYA FESTA」など日本酒の魅力に触れるきっかけになってくれたらと、今では年間30あまりのイベントを企画開催している。
自分がいちから手掛けた東京の地酒をもっと知ってもらうため、酒造りからPRまで走りまわっている。

ACCESS

豊島屋酒造株式会社
東京都東村山市久米川町3-14-10
TEL 042-391-0601
URL http://toshimayasyuzou.co.jp/