シルクロードから伝わり発展した木画
あまり聞き慣れない「木画(もくが)」という言葉。木で絵を描くのかな、それとも木に絵を描くのかなと想像はできるものの、具体的な作品は思い浮かばないかもしれない。木画とは、木片を組み合わせ、その木目や木肌を生かして独特の模様を作り、箱や家具などに装飾を施すというもの。木片以外にも象牙や鹿角といったものも使用され、代表的な幾何学模様を始め、さまざまな文様を作りだす技法だ。
古代エジプトにその原型を見ることができるというが、日本にはシルクロードを通り、中国から伝わったとされる。
奈良時代、とくに天平文化において盛んに用いられた技術で、正倉院には紫檀木画双六局(したんもくがすごろくきょく)という宝物が収蔵されている。繊細でありながらも豪華。実際に作品を見てみると、木の組合せだけでここまでの模様を描くことができるのだろうかと疑いたくなるほどの、美しい装飾がほどこされている。
正倉院の宝物に残る木画技術を現代へ
「天平時代のデザインは、現代のわたしたちから見ても新しい」と語るのは、坂本曲斎(きょくさい)さん。正倉院の御物の修理を手掛けているという職人さんだ。たしかに、和というだけでなく、どことなく異国情緒も漂うその姿は、なんだか新鮮でもある。
「今ではあまりしられていない伝統の技である木画を多くの方に知ってほしい」ということで、坂本さんは月に一度、自ら作品を解説をするなどして普及活動も行っている。
自然と生活が交わるなかで、作り続けられてきた伝統。そこには常に新しさがある。1500年前から受け継がれる芸術は、自然と人間の共作をしみじみ感じさせてくれる。