コシヒカリ発祥の地
「コシヒカリ」といえば、誰もが食べたことのある定番のお米。その「コシヒカリ」が誕生する舞台となったのが「福井農業試験場」だ。「福井農業試験場」は水稲や果樹、野菜の品種改良を行うほか、高品質な栽培方法の開発等を行っている研究機関。
中田が伺ったのは7月中旬。ちょうど、試験場ではお米の花が咲く季節だ。
お米の花は、穂についている籾(もみ)の部分でとても小さい。農業試験場では、この小さな花に他の品種の花粉を着ける交配作業を約1ヶ月間集中的に行う。
この日は中田も交配作業を体験させていただいた。
作業場は、花粉が飛ぶことがないように、無風状態の環境で行わなくてはいけない。また、花の開花を促すために室内は40℃近くあった。
交配をくりかえし、よりよいお米を開発する
交配作業は、まず、母本とよばれる稲を約43℃のお湯に浸して花粉の働きをなくす。約7分後にお湯から出して、開いていない余分な花を1つ1つはさみでカットする。そして、父本(花粉親)の花粉を、母本にふりかける。受粉した花はお米になり、来年はこのお米を種として使用する。
交配は1年に約200~250組み合わせ、こうしてできるお米の種類は約10万種類にもなる。
その中から良いものを6000種類選んで、その種を次の年には田んぼに植えて、また花が咲く時期には交配する。いい品種、よくない品種を数年かけて見極めていくことから、これだけ多くの交配をしても、発表できる品種は年に3種程度だという。
10年後の“食”を見据えたお米作り
最近のヒット作は、2004年に誕生した「イクヒカリ」。コシヒカリより背が低く栽培しやすい。冷めてもふっくらした食感を保ち、旨味が落ちにくいのが特長だ。
「コシヒカリを超える美味しいお米というのは既にあると思います、しかし、コシヒカリというブランドを超えるのは難しいですね。新しい品種を売り出すには、販売戦略やいかにブランド化するかという、問題があります。」農業試験場の方はそう話してくださった。
2010年の夏は記録的な猛暑だったが、全国的にも過去50年間平均気温が上昇している。そのためお米の品種改良は、環境の変化やこれから10年後の生活を見据えながら進められているのだという。私たちが美味しいお米を食べることができるのは、こうした農業試験場の方々のご尽力の賜物でもあるのだ。