自宅兼アトリエをそのまま記念館に
東京の渋谷駅コンコースに岡本太郎の『明日の神話』が現れたのは2008年。数十メートルもある巨大な壁画で、当初その圧倒的なパワーの前に足を止めない人はいないぐらいだった。この壁画を見に全国から渋谷を訪れた人も多いという。
今回訪れたのは、渋谷駅にも程近い東京・青山にある岡本太郎記念館だ。開館は1998年。もともと自宅兼アトリエとして岡本太郎が住んでいた場所を改築してそのまま記念館にした。今なお、芸術家が住んでいた独特の雰囲気が色濃く感じられる。
入るとすぐに目に入るのが中庭のオブジェ。左右非対称で見る角度によって見え方が変わる彫刻に目を奪われ、ドアに入るよりも先についついそちらに足が向いてしまう。
アトリエだからこそ残る作品
見学当日は「岡本太郎の50年」という企画展が催されており、1947年から絶筆となる最後の作品までを10年区切りで1枚ずつ展示されていた。1947年の壁に展示されていたのは、戦後の岡本太郎作品のなかで日本に残る一番古い作品だという。飾られている絵はそれぞれ時代ごとに5枚。それでも岡本太郎の変遷を垣間見ることができる。大々的な展覧会も良さはあるが、ひとりの作家を見つめるために凝縮した空間でこうした展覧会を観ることができることは、記念館だからできることなのではないだろうか。
この岡本太郎記念館にある作品は完成品よりも、制作途中の作品が多いのだという。「アトリエに残された制作途中の作品からも作家の息づかいを感じることのできる場所」と案内してくれた布山さんは話をしてくれた。
今でも岡本太郎は東京青山にひっそりと、だが鮮やかに息づいている。これからも岡本太郎の作品の数々は人々を魅了し続けるだろう。