欄間を優美な飾る井波彫刻
寺や神社などにある、欄間(らんま)。天井板と鴨居のあいだに作られた明かり取りや換気のためのスペースで、寺や神社の欄間には虎や龍をかたどった凝った技法の装飾が使われる。富山に古くから伝わる「井波彫刻」は、その豪華な欄間に欠かせない彫刻だ。
その由来は、江戸時代の中期、1700年代終わりごろ。本願寺五代の綽如上人(しゃくにょしょうにん)が1390年に建てた瑞泉寺を修復するため、京都から御用彫刻師が派遣された。
そのもとで、地元大工が本格的に彫刻の技術を学び、井波彫刻が生まれたのだ。そのときに修行をした、七左衛門が瑞泉寺に彫刻した「獅子の子落とし」といわれる作品は、狩野派のような優美な図柄を浮き彫りで描き出した、日本彫刻史上の傑作として知られている。
その後、井波彫刻は発展を遂げ、寺の欄間だけでなく、衝立、仏像などいろいろな作品を作り出した。一般家庭の欄間なども作り、生活にも浸透していった。
職人の育成を続ける
今回お話を伺った野村清宝さんは、国の伝統工芸士に認定された職人さん。
優雅なデザインと立体感で、生命力が伝わってくる作品を作っている。
現在、全国各地から井波彫刻に魅せられた入門希望者が訪れ、職人とお弟子さんを含めて彫刻師は200人を超えているという。「有名な彫刻の産地でも、近代ではなかなか弟子を取らなかったんですね。しかし、井波では伝統の技術を絶やさないために、弟子をとってしっかり教える。それが井波彫刻の大きな特徴です。」野村さんは、そう話してくださった。
工房では、若い彫刻師の方が欄間を彫る作業をされていた。
井波彫刻は、一地方の伝統工芸としてほそぼそと受け継がれているのではなく、全国的な広がりを見せている。