これまでのイメージを覆すほうじ茶 油谷製茶 油谷祐仙さん/石川県宝達志水町

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ほうじ茶が石川県で有名な理由

石川県のブランド茶として知られる「加賀棒茶」をはじめ「棒茶」や「ほうじ茶」が石川県の特産として有名になっている。それらのお茶にどんな歴史があるのだろうか。

石川県では江戸時代に加賀藩がお茶の生産を奨励したことにより、明治時代にはすでにお茶の名産地として広く知られていた。しかし、その後に嗜好品として海外に輸出されるようになり、庶民には手の届かないものになってしまった。そこで、石川・金沢の茶商が荒茶精製時の副産物である茎部を有効活用する作り方を考案。こうして価格を抑えることができるようになり、お茶が庶民にも普及したと言われている。上質な煎茶が一番茶の葉だけを繊細に蒸して作るのに対して、「番茶」「ほうじ茶」「茎茶」「棒茶」は茎まで一気に刈り込んで一気に強火で焙じて香りを立たせて作るというものだ。淹れ方も異なり、煎茶が低温で丁寧に抽出するのに対して、「番茶」「ほうじ茶」「茎茶」「棒茶」はドボドボと熱湯を注ぐだけだ。

だが、「加賀棒茶」は別物だ。一般的にほうじ茶は煎茶のために摘み取られたあとの残りの茶葉を利用することが多いのに対し、「加賀棒茶」は葉だけではなく、上質な茎の部分も焙煎するのが特徴で、煎茶に負けないブランド性を築いている。なかでも石川県羽咋郡(はくいぐん)にある油谷製茶の「加賀棒ほうじ茶」は、数ある加賀棒茶のなかでも別格の味わいを誇る。


ほうじ茶の効能

高温で焙じるという特徴からほうじ茶は多くの良い効能が期待されている

まず一つ目が冷え性の改善だ。これはほうじ茶を焙煎する過程で出る、香りの主成分「ピラジン」が作用するからだと言われている。この「ピラジン」は血管を広げ、血流をよくするといわれ、冷え性を改善する効果が期待されている成分である。

二つ目として、リラックス効果だ。これはお茶に含まれる甘み成分「テアニン」が体に働きかけ、リラックス効果を生むとされている。

このように冷え性改善効果やリラックス効果を得ることが期待できる飲み物としてほうじ茶は注目されている。


進化し続ける油谷製茶

油谷製茶は大正7年にお茶の担ぎ売りから始まって、二代目を継いだ先代が製茶を始めたのが始まりだ。配合にこだわった自社の茶を百貨店の催事などで自ら淹れてお客様に飲んでもらい、ファンを獲得してきたのは現社長の油山祐仙さんである。原料の選別から焙煎・熟成に至るまですべての工程を自らの目で、舌で確かめ、その年に出来る最高の味にこだわっている。

「普通のほうじ茶は、葉と茎を一緒に焙じるんですが、うちは葉を取り除いて茎だけを焙じます。甘みを引き出す秘訣は、高温で一気に熱することです。ガスバーナー3本を使って、250~300℃の熱で10分ほど焙じるんですが、1℃ちがうだけでも味が変わるので、季節によって温度は変えています」(油谷製茶・油谷祐仙社長)

飲んでみると、まったく雑味がなく、香りにも味わいにも奥行きがあり、ほっとひといきつきたくなるような一品だ。

これを飲むと中田も「茎茶というと、煎茶をとった残りだと思っていましたが、こんなに甘く豊かな味わいになるんですね」というほどだった。

油谷製茶では、ペットボトルや粉末など、時代にあわせた商品開発も積極的に行っている

「ペットボトル用は、より甘みを強調するように研究を重ねました。茶葉は自然のものですから、毎回同じ味というわけにはいかない。それでも同じような味を作るためにいろいろ工夫をしています。粉末は最近、菓子やアイスクリーム用などの注文が増えています。でもやっぱり基本はおいしくて、安心・安全なほうじ茶を作ることです」(油谷社長)ブランドや歴史にあぐらをかくことなく、常に進化し続ける。手軽においしさを体験できるペットボトルや水出しでも美味しい茶葉はその成果といえるだろう。これからも油谷製茶は石川県だけでなく、全国の日本茶の成長を促していくだろう。


ACCESS

有限会社 油谷製茶
石川県羽咋郡宝達志水町荻市チ52
TEL 0767-29-2057
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