選りすぐりの長崎産・福岡産茶葉で追求する「本当においしい日本茶」-お茶処 しまだ

選りすぐりの長崎産・福岡産茶葉で追求する「本当においしい日本茶」-お茶処 しまだ

厳選した長崎県産そのぎ茶と福岡県産八女茶を用いてオリジナル商品を作る「お茶処 しまだ」。「日本茶AWARD」やパリ唯一の日本茶コンクール「Japanese Tea Selection Paris 2020」で銀賞を受賞するなど、国内外で高く評価される味はどのように作られるのか。「お茶処 しまだ」嶋田祐子さんを訪ねた。


数々の賞を受賞する「お茶処 しまだ」

長崎県JR諫早駅から徒歩3分。県唯一の一級河川「本明川」から程近く、静かな市街地にある「お茶処 しまだ」は、「日本茶AWARD」などの国内の品評会のほか、パリ唯一の日本茶コンクール「Japanese Tea Selection Paris 2020」銀賞などで数々の賞を受賞し、注目を集める日本茶販売店だ。

経営者である嶋田祐子さんは、近年の全国茶品評会蒸し製玉緑茶部門で目覚ましい成果を収めている「そのぎ茶」の産地、東彼杵町出身。先代までは茶農家から直接茶葉を仕入れて火入れをしたり、ブレンドして加工して販売する卸問屋として茶業にたずさわってきたが、嶋田さんの代からは卸問屋ではなく、消費者に直接販売する小売業に転向した。「日本茶を生業にする家業としては私が6代目となります。幼い頃から、茶葉を仕入れて加工する父を見て育ち、茶の仕上げの大切さや原葉の見方等も教わってきました」。店舗には嶋田さんがこだわりぬいて仕入れた商品がずらりと並ぶ。

「これからの時代は、日本茶の文化や素晴らしさを次世代に伝えていくことが大切だと考えています。消費者が求める日本茶はどのようなものか、先代から学んだ経験と知識を活かし、生産者や製茶者の方々に協力を仰ぎながら、理想の味を作り上げています」。

卸問屋から消費者に直接販売する小売店に転向したことで、消費者の反応がダイレクトに感じられるようになった嶋田さん。この強みを活かし、使用する茶葉の品種、火入れ加減等の要望を生産者へ細かに伝える。依頼先は、長崎県、福岡県で上質な茶葉を作る生産者たち。先代からの長い付き合いがある、高い技術を持つ生産者や製茶者ばかりだ。茶の卸問屋としての長い歴史で築かれた信頼関係があってこそ、嶋田さんが追い求める味わいが完成する。


日本茶のおいしさ、茶文化の素晴らしさを発信

先祖から受け継がれた茶文化の素晴らしさを広めることが、自身の役割だと考える嶋田さん。日本茶インストラクターとして国内外で活動しながら、現代の生活スタイルに合った「おいしい日本茶」のあり方を常に模索している。例えば地元の高校生とのコラボ商品の開発もその活動の一環。緑茶、焙じ茶、玄米茶ほか多彩な品種の茶を用意し、高校生がブレンドした「高校生がマイボトルに入れたくなるお茶」を作った。この経験から明確になったことは2つ。まずは、世代によって味の好みが全く異なること。そして急須を用いずにお茶を淹れられる、質の高い「ティーバッグ」商品が必要であるということ。「彼女たちが作ったお茶の味は、私にはとても薄く感じました。つまり若者は、ゴクゴク飲めるお茶を求めているということ。長年茶業界にいると、うま味や甘味、水色等にとらわれてしまいがちです。それももちろん大変重要ですが、消費者、特に若者が求めている味との違いを認識することも同じくらい大切」。昨今は急須でお茶を淹れる習慣がなくなりつつあることを踏まえ、ティーバッグやインスタントティーの商品開発にも力を注いでいる。「私たちが作るティーバッグの日本茶は紗の素材を用いているため、お湯を注ぐだけで茶葉が開きやすく、甘みや香りがしっかりと引き出されます」。品評会等で高く評価される、素晴らしい滋味、水色、甘味のある日本茶を尊ぶ一方、日常で気軽に楽しむお茶があって然るべき。品評会での厳しい審査を見据えた生産者の努力や技術に大きな敬意を払うと同時に、時代のニーズに向き合い、旧来の形態に嵌まりすぎない商品を模索する。そんな軽やかで柔軟な「日本茶のあり方」こそが、日本茶文化の更なる発展につながると嶋田さんは考えている。


「お茶処 しまだ」の受賞歴や代表的な商品


厳選した長崎県産「そのぎ茶」、福岡県星野村産「八女茶」を中心とした商品を取り揃える「お茶処 しまだ」。最高級茶から日常使いで楽しむリーフ、水出し茶、ティーバッグ、インスタントティーまで幅広いラインアップが魅力だ。中でも注目したい商品は以下の3商品。


八女伝統本玉露「絶品」


2019年製は日本茶AWARD大賞受賞で日本茶大賞・農林大臣賞を受賞。2020年製はパリで唯一の日本茶コンクールである「Japanese Tea Selection Paris」で銀賞を受賞した。口に含んだ瞬間に濃厚なうま味と香りに包まれる、伝統と革新の融合させた匠の技があってこその逸品。


八女煎茶「つゆとろり」

2022年製が日本茶AWARD合組煎茶部門プラチナ賞受賞

濃厚な旨味が特徴の品種や深みのある味わいの品種等をブレンドすることにより香りも旨味も最高の状態で仕上がりました。トロリとしたバランスの取れた美味しさが楽しめる。


焙じ茶「かおりひめ」

軽く萎凋(いちょう)させて仕上げた青ウーロン茶を丁寧に焙じ、優しく上品な花香と焙じ香を引き立てている。「2021 Paris Japanese tea selection」で銀賞を、「2022日本茶AWARD」ではほうじ茶部門プラチナ賞を受賞した。


これからの日本茶のあり方を追求

嶋田さんの目標は、現代の日本の生活スタイルに心地よく馴染む日本茶を作っていくこと。まずは日常使いで気軽に日本茶を楽しむことを目的とした、急須を使用せずともおいしく淹れられるティーバッグや水出し茶の開発を進めている。しかしその一方、本格的な淹れ方で、質の高い日本茶の茶の個性を存分に堪能したいという声も少なくない。「私は消費者、生産者、どちらの声も聞ける立場。それぞれの意見、要望を上手く取り入れつつ、さらに茶業界以外の意見も積極的に反映させて、多様なターゲットごとの『おいしく、心地よいと感じる日本茶』を生み出していく努力を続けて行きます」。


約35年ほど前にそのぎ茶振興協議会が発足するまで、長崎県の日本茶は佐賀県産「嬉野茶」として販売されていた。しかし現在では、全国茶品評会蒸し製玉緑茶部門でそのぎ茶が日本一に輝くなど、長崎県産茶の存在感とブランド力は日に日に高まっている。 「生産者の方々は非常に前向きで、高い技術と能力を持っていらっしゃる。彼らと共に、味の目標を明確に掲げ、実現させることができれば、一層日本茶は面白くなっていくと思います」とイキイキと話す嶋田さん。先代たちが茶卸問屋として繋いできた縁を大切に、生産者へのリスペクトそして日本茶への情熱と愛を持って、消費者に寄り添いながら日本の茶文化を伝道しつづける。朗らかでそして柔軟に「おいしいお茶づくり」に挑戦し続ける嶋田さんの姿に日本茶業界の明るい未来が見えた。

ACCESS

お茶処 しまだ
長崎県諫早市永昌東町7−10