全国のプロが認める養殖鰻
養殖より天然のほうがおいしい。鰻に限らず、そんなふうに思い込んでいる人も少なくないのではないだろうか。たしかに天然鰻は市場に出回るのは全体のおおよそ3%程度。その希少性も相まっての事だろう。しかし、全国の鰻のプロが「天然ものよりおいしい」と口を揃える養殖鰻が鹿児島に存在する。
この稚魚は「シラスウナギ」と呼ばれ、日本では鹿児島をはじめ、宮崎、高知、静岡などの川を遡上する。このことから鹿児島県では昭和40年頃から養鰻が盛んに行われるようになったという。2019年(令和元年)時点で、鰻の生産量は全国1位。国内の養殖うなぎの40%のシェアを占めている。中でも大隅半島の東側に位置する曽於郡は県内の生産量トップを誇る。
その曽於郡大崎町の風光明媚な田園風景の中に全国の鰻の名店から支持される泰斗商店がある。泰斗商店は育てた鰻を全国の料理人やお客様に届ける販売店。倉庫には選別された自慢の鰻が出荷を待っていた。
秘密は鰻を育てる豊かな環境
「志布志で養鰻が盛んなのは、このあたりの海で鰻の稚魚(シラスウナギ)がよく獲れるから。加えて水が豊富できれいなことや気候なども影響していると思います。鰻を育てるには最高の環境が揃っているんです」(泰斗商店・横山桂一代表)
豊富に湧き出る地下水は、霧島山系由来のシラス大地で長年にわたり濾過されたもの。泰斗商店が選ぶ鰻には臭みや雑味が一切ないのは、この水がベースになっているからだ。また安心・安全をモットーに、抗生物質を含む餌を使用せず、成長に合わせて丁寧に育てられた鰻だけを厳選しているのもこだわりだ。
「今までもいくつかブランド鰻というものは存在していたんですが、基本的には生産者が直接売ったり、料理人とコミュニケーションをとったりすることはほとんどありませんでした。でもそれだと本当にいいものを作ってもきちんとした評価をされない。それで最初から最後まで自分の目が届くところで販売する形を作りたいと思ったんです」
24時間365日、徹底的に水温や水質を管理し、丁寧に育てた鰻がおいしくないわけがない。天然うなぎが尻尾を巻いて逃げ出す、泰斗商店の鰻は、一度食べてみる価値がある。