あらゆる面で焼酎業界を牽引する『小牧蒸留所』/鹿児島県薩摩郡

100年以上続く焼酎蔵が100軒ほどある鹿児島において、一目置かれる焼酎蔵がある。

鹿児島県の北西部、薩摩郡さつま町にある「小牧蒸留所」は、1909年(明治42年)創業、紫尾山をはじめとした山々が連なり、蔵のすぐ横には一級河川の川内川が流れる自然豊かな土地に蔵を構えている。これまでに川内川の氾濫で3度も水害を受けながら、その度に周りの人の支えと蔵人が一丸となって逞しく復活してきた。

現在、蔵を切り盛りするのは、社長であり兄の小牧一徳さんと、弟で専務取締役・三代目杜氏の小牧伊勢吉(本名:尚徳)さんの2人。代表銘柄は、2009年に蔵の100周年を記念して誕生した「一尚」、初代創業者「小牧伊勢吉」二代目伊勢吉会長の名前をとって命名し地元で愛される「伊勢吉どん」、一次・二次ともカメ仕込みで造られた昔ながらの伝統の技で醸されている「小牧」など。「一尚」には、一生のお付き合いという意味を込めて一徳さんと尚徳さんの名前から一文字ずつとり命名されている。
「一尚」はボトルやラベルも時代に合わせて、家紋をモチーフにしながらスタイリッシュなデザインに。焼酎の次の100年を目指した酒造りの一環で、酵母菌にビール酵母を使用して超低温発酵にて醸した『一尚ブロンズ』、創業当時の焼酎を造ることを目指して100年前から培養分離され現存する黒麹菌と酵母菌と、長年の技術を融合させ醸した『一尚シルバー』、青果用の紅さつま芋を原料にし、甘くフルーティな味を目指して醸した女性向けの『紅小牧』の3種類。ほかにも、通常芋焼酎には米麹が使われることが多いが、麹にも芋を使った芋100%の「一刻者」など、いずれの銘柄もこだわりぬかれた逸品だ。

小牧蒸留所を訪ねると、まず驚くのが蔵人に制服があること。蔵が創業した時代に合わせて、イギリスの産業革命をイメージしたのだというが、先代たちが築いてきた歴史や原点を大切にしたいという熱い想いがある。確かに蔵の前で楽しそうに笑っている彼らの姿には、映画でみるような労働者たちのノスタルジックな雰囲気がある。

日本酒が「醸造」であるのに対して、焼酎は「蒸留酒」。発酵後に加熱した蒸気を冷やして液体を抽出する「蒸留」という製造工程を加えることで、不純物が除かれ、アルコールの純度が増すのが特徴だ。小牧蒸留所では、芋の選別ひとつにしても「大切な人に食べてもらえるか」という気持ちでより分け、焼酎をつくる原料や発酵・蒸留のバランス、工程のひとつひとつを丁寧に、こだわりぬいて作っている。

焼酎を一過性のブームだけで終わらせない、世界に誇れる蒸留酒地帯として確立したい、と、2020年には小牧さんが中心となって若手焼酎蔵人たちによる『九州本格焼酎青年会』を立ち上げた。小牧蒸留所は、まさに焼酎の未来をリードするトップランナーである。

ACCESS

小牧醸造株式会社
鹿児島県薩摩郡さつま町時吉12番地
TEL 0996-53-0001
URL http://komakijozo.co.jp/
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