この土地でしかできない野菜の味がある
焼けた肌が毎日畑に出ていることを物語り、いかもに“ファーマー”という風貌の浅野悦男さん。
エコファームアサノで作られる野菜は数々あるが、なかでも有名なのがイタリア野菜だ。
「もともとね、第2次イタ飯ブームのときだから、今から20年ぐらい前に始めることになったんですよ」
すでに20年前からイタリア野菜を作っていた浅野さんだが、転機は「タルティーボ」がもたらした。
タルティーボとは、グリルの付けあわせなどによく使われる食材だ。
浅野さんは、「日本でタルティーボが作れるわけがない」とイタリア人の農家に言われたそうだ。
「いろいろ試しました。イタリアにも行きましたし、その人のところにも行った。でも作れるわけないのは当たり前なんだよ。土も違うし、水も違う。それなら、日本でおいしい日本のタルティーボを作ればいいんだって思ったんだよね」
「だって、イタリアだって地方地方で食べものが違うでしょ。中田さんはもちろん知ってると思うけど」
「全然違いますね」
「自分のところが一番だって思って譲らないでしょ」
「そうですね。仲は悪いかも……」
「それはある意味いいことかもしれないんだよね。日本もそういう部分があったらいいんじゃないか。“うちにはこんなにいいものがあるんだ!”ってもっと言っていいと思うんだ」
「そうですね。ミラノのご飯もナポリのご飯もローマのご飯も全部違う。日本はそういうところが薄いかもしれないですね」
自分の作るものに自信があるからこそ、こう言えるのではないか。
香りは葉よりも強い、バジルのつぼみ
お話の後に畑に出て、作物を見せていただいた。
浅野さんが摘んだのは、バジルのつぼみ。
「これね、葉っぱよりも香りが強いんだよ」といって、手渡してくれたつぼみに鼻を近づける。
「本当だ、すごい。これ、リゾットのなかにポンって置いてもいいかもしれない」
「おもしろいね。葉っぱが入ってないから、“何でバジルの香りがするんだ”って不思議に思うかもしれないね」
浅野さんの畑の野菜たちは、香りも味も強いと言われている。
けれども、浅野さんは余計なことはしない。必要以上の肥料や、ムダな水遣りなどはしない。
それでおいしくないなら、もともとダメだったのだろうという。
野菜の力を信じて作るから、本当に強くおいしい野菜ができあがるのだ。