瑞々しい陶芸「陶芸家 神谷紀雄」/千葉県千葉市

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鉄と益子の土で作る「鉄絵銅彩」

「もともと僕は全然、陶芸をやる気がなかったんですよね。でも、親に“大学に行くなら、美術学校なら金を出してやるが、それ以外は自分で行け”、と言われて。普通逆ですよね(笑)」
そう笑う神谷紀雄さん。
益子の窯元の家に生まれた神谷さんだが、それまで縁がなかったデッサンをわずか1カ月の突貫工事で習い、多摩美術大学に合格。
陶芸の魅力に取り憑かれたのは、それからだという。

神谷さんの陶芸の特徴は、梅や葡萄、椿など身近な植物をモチーフにした「鉄絵銅彩」の技法。
益子の土に白化粧をほどこし、鉄で絵を描き銅で彩色する。
草花が躍動するようなおおらかで温もりのある作品には、高い評価が集まっている。

世のしがらみから離れて制作したいと、自然に囲まれた千葉の林の中に工房を構えた神谷さんだが、生まれ故郷・益子への思い入れは強い。
「僕は益子に生まれたから焼物をやっているんだな、と思っているんですよ。だから、益子の生地にはこだわっていきたい」
「益子の生地というのはどんな特徴があるんですか?」
「特別いい生地ではないんです。可塑性、粘りもそれほどないし。耐火度は結構ありますが、どちらかといえば、粘土の質としてはいいほうではないですね。でも、僕にとっては非常にやりやすい土です」

この時代にしか生まれない作品を作り続ける

「どこにあっても、神谷紀雄だとわかる作品を作りたい」と語る神谷さんにとって、もっとも難しいのは、時代性の表現だという。
「伝統工芸では、“繰り返しは後退”だと言われているんですね。これが一番難しい。僕自身、作品には現代性がないとダメだと思うんです。時代が移り変わっても、つねに瑞々しさを保つ作品――新しいと感じさせる作品を作っていかないと、伝統として残っていかないんじゃないか、と」
例えば、桃山時代の焼物は今でも新鮮さを保って私たちの目に映る。
でも、今の世で桃山と同じ焼物を作っていては、新しさは感じられない。
「だから、われわれは平成の世でないとできない焼物を作るべきなんだと思うんです。そういうのを作っていけば、人の心に訴えかけられるんじゃないかと」

最後に、神谷さんのご指導で陶芸にチャレンジ。
「陶芸もこれまでに何度かやらせていただいているんですが、普段やっていないとまったく身に付かないんですよね」と語る中田に、陶芸界の重鎮である神谷さんは、手取り足取り、気さくに技術を教えてくださる。
「中田さんは集中力があるから、1週間みっちりとやれば身に付きますよ」と励ましをいただきながら、中田と益子の土との格闘は続いた。

ACCESS

陶芸家 神谷紀雄
千葉県千葉市若葉区東寺山9
URL http://www.kamiyanorio.com/
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