世界各地から蒐集されたコレクション
松本民芸館は田園地帯のなかに伝統的な日本家屋の建物があり、門をくぐると緑豊かな庭園が広がっている。昭和37年、工芸品店を営んでいた丸山太郎が創設。民藝運動の祖、柳宗悦に共鳴したことから始まった。常設展では日本各地はもとより世界各地から集めた膨大なコレクションの中から、およそ800点が展示されている。「民芸館というと日本の古いものと思われるが、世界各地、新しいものも古いものもあり、それが当館の特徴の一つ」と松本市立博物館館長の窪田雅之さんは話す。
薄くて軽い、シンプルだけれどユニークな茶碗
「おばあちゃんの家にあっても現代的なマンションの食卓でも溶け込むものを」というのが食器作りのこだわりだ。「お茶碗は重たいのは嫌いなので、軽くて薄いものを作りたい」と西村さん。「シンプルできれい。どこでも見たことがない」と中田も優美で卓越したセンスを称えた。漆を使った茶碗は食洗機や電子レンジは不可だが、陶器の茶碗とは違って、ぶつかった時にカツカツとした音が出ない。更に漆の上に錫を蒔いて仕上げると、それは金属のような音がするのだといい、素材から発せられる「音」もまたそれぞれに特徴があって興味深い。
丸山氏による卵殻の作品も
コレクションの中には丸山太郎の作品も残されていた。中田も好きだという卵殻を施した小物である。卵殻は卵の殻を細かく割り貼り付ける技法だ。当時使われた卵や用具もそのまま展示されていた。館内には休憩所が設けられており、版画や世界各地の民芸品に囲まれて、訪れた人が一息つく憩いの場になっている。庭と建物と世界の民芸品が一体となり、小宇宙のような不思議な調和を保っていた。