建具のなかで突き抜けた技術「組子細工」
和室に降り注ぐ陽光。その陽射しが障子を抜けると、柔らかな光となって降り注ぐ。
そこにひときわ繊細な紋様を映し出すのが、組子だ。組子とは、欄間や間仕切り、障子や襖に木材を組み合わせた細工をほどこした飾り。釘などを一切使わず、木材をパズルのように組み合わせて作る。
栄建具工芸の横田栄一さんは、組子細工の第一人者。小諸の家具職人の家に生まれ、16歳から8年間、親方の元に住み込みで建具の修業をした。しかし、「何かもう1つ突き抜けた技術がないと、生き残っていけないぞ」と考え、組子細工にたどりついた。当時は、組子細工専門で生計を立てるなんて、誰も考えられなかった。そのなかで、横田さんは25歳で独立、栄建具工芸を設立し、あれよあれよという間に組子細工マーケットを打ち立てた、いわば組子細工界のパイオニアだ 。以後、組子細工一筋で生きてきた。
木をいかに組み合わせるか。
最初は建具仲間たちから仕事を受注していたが、次第に腕を見込まれて旅館や飲食店から仕事を請け負うようになる。そこから少しずつ一般住宅の仕事や、善光寺や松代城といった重要文化財の修繕なども手がけ、今では全国建具展示会で内閣総理大臣賞を4度も受賞、さらに黄綬褒章も受ける名工である。
工房では、総理大臣賞を受賞した作品や製作途中の作品を拝見させていただき、木をどのように組み合わせているのかを教えていただいた。
さらに、中田も組子作りを体験させていただく。檜や漆の木を小さく切った木片を組み合わせて枠にはめ込んで行く作業。はめ込んだ木片を、さらに小型のヤットコを使って整える。この調整を行うことで、完成したときの美しさが違ってくるのだ。
新たな表現、神代杉を取り入れる。
横田さんは常に新たな組子細工の表現を追及している。土に深く埋まっていた為に黒く変色した「神代杉」を素材に取り入れたり、木の色を変えて表現を増やす工夫もそのひとつ。
その時代、その時代に求められる技術とは何か–横田さんはずっとそれを問い続けているのだ。