磯自慢が重要視する2つの“洗い”
駿河湾に面し、伊豆半島、富士山からもほど近い、静岡県焼津市にある磯自慢酒造。南西には南アルプス白峰三山、間ノ岳(日本百名山)を源泉とする清流大井川が流れ、酒造りに欠かせない水の恵みを与えている。中田が寺岡洋司社長にお酒の工程でもっとも重要視していることを聞くと、「2つの“洗い”の作業を大切にしている。とことん米をきれいに洗うことと、最後に搾る袋を洗い、徹底的にクリーンにすること。この袋が汚いとせっかくの50日間が台無しになる」と話してくれた。この搾る袋というのは、醪を搾り、液体(清酒)と固体(酒粕)に分ける工程の際に使用される袋のことである。
磯自慢の酒は名水と厳選した酒米のハーモニー
徹底的に洗米した後は、お米を蒸し、法令機で一定の温度まで冷ます蒸米の放冷作業が行なわれる。冷ましたお米は麹室へと運ばれ、麹菌を撒く作業がある。蒸されたお米に麹菌を撒く作業を中田も体験させてもらう。慎重に麹菌を撒き、「この粉末が発酵のパワーを生み出すとは」と驚きを隠せない。麹室は麹菌が繁殖しやすいよう30~35度程度の室温に保たれており、暑さは堪えた様であった。酒米は、兵庫県の特A地区である東条地区産の山田錦や愛山・五百万石など産地を厳選した酒蔵好適米を用いている。
純米酒部門1位の雄町
最後に純米酒 部門1位となった「磯自慢 特別純米 雄町」を利き酒する。中田はグラスに注がれた日本酒をゆっくりと、舌の上で転がして味と香りを確かめ、「バランスがよくキレのある味だ」と味わいながら感想を語った。フルーティな香りがハーモニーとなり日本食はもちろん、フレンチやイタリアンにも合うと評判だ。酸味のある日本酒が流行っているが、「真似をしても仕方がない。酸が低くても後味のよいものはできる。香りと味のバランスの良さがすべてだ」と寺岡社長は話した。