釉薬を使わない独特の手法“焼締”
「陶苑 御船窯」は父・津金貞機さんと双子の息子の3人で陶芸作品を作る窯元。しかし、その作風はそれぞれ異なる。兄の津金日人詩さんは釉薬を使わず焼きあげる“焼締(やきしめ)”の作家。“焼締”は、焼物の表面に使う釉薬を使わず、窯で薪を使い焼くことで素地に灰が降りかかり、その灰が釉薬の代わりとなって模様となる焼き方で独特な風合いが特徴だ。
静かで柔らかい風合いの“青瓷”
弟の津金日人夢さんは“青瓷”作家で、日人夢さんは有田で陶芸の基礎を学び、青瓷については独学で習得し、現在は食器や杯などを作っている。“青瓷”とは、青瓷釉を施して焼いた器のことで、薬をかけて焼くことによって様々な色を出すことが可能になる。鉄分を多く含む釉薬は高温で焼き上げるとなんとも美しい青緑色を生み出す。
「青瓷の色に魅かれて、こちらの道に進みました。静かで柔らかい青瓷独特の色合い。何よりも品がありますよね」日人夢さんは青瓷の魅力を教えてくれた。
青瓷の上品な透明感を引き出す職人技
“青瓷”は素焼きが終わった段階の陶器に粘土や灰などを水に溶かした釉薬をかけていく。釉薬をかけて焼くことによって様々な色を出すことが可能になる。釉薬を厚めにかけていくが、一回ではかけきれないため、何度かに分けて丁寧に作業をする。
釉薬は顔料というよりは染料に近く、陶器が釉薬を吸い込む力で吸着させる。吸着させる量が多過ぎると逆に水を吐き出そうとして色が付かないこともある。器の表面と釉薬が触れている時間の長さで色合いに濃淡が出るが、色付けの作業がうまくできているかどうかは焼き上がるまでは分からない。何度も何度も作品作りを繰り返して感覚を身につけていく。あの美しい青緑色を均一に発色させるのはまさに職人技だ。
神品と呼ばれた青瓷を発信していく
「絶対的に支持する人がいたわけではないのですが、中国時代の作品や現代の日本人作家の作品から様々な刺激を受け、徐々に自分独自の色や形を作り出してきました。これまでもたくさんの人たちから様々なお話を伺いました。青瓷を作っている先輩や仲間たちと切磋琢磨しながら前に進んでいる感じです」と日人夢さんは笑顔で語ってくれた。
古くは“神品”と呼ばれた中国の“青瓷”。先人から引き継いだ “青瓷”の魅力を、現代の若手陶芸家が新しい見せ方で日本へ、世界へ発信して行く。