350年の歴史が息づく鉄「有限会社二唐刃物鍛造所」/青森県弘前市

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350年の歴史を受け継ぐ製鉄

青森県の津軽地方は古くから製鉄の盛んな場所だった。岩木山麓では大規模な製鉄が行われており、奈良時代から平安初期に使われていた鉄製の刀も発見されている。その流れは時代をくだっても続き、江戸時代の弘前には100軒以上もの鍛冶屋が並び鍛冶町が形成されていた。そのなか、約350年前に津軽藩より作刀を命じられたのが、今回お伺いした二唐刃物鍛造所のもととなっている二唐家だった。以降、日本有数の刀鍛冶として腕をふるってきた。

青森県伝統工芸品に認定される包丁

昭和に入っても刀匠として活躍。とくに二唐国俊は名匠として名高く、作刀技術発表会特賞など数々の賞を受けた。伊勢神宮、明治神宮の奉納刀を作製するという名誉ある仕事も成し遂げた。
 その二唐家の歴史を受け継ぐのが二唐刃物鍛造所だ。時代がくだり昭和40年代に入ると作刀は営業品目から外れるが、地鉄に鋼をつけたものを叩いて作るその作刀の技術は本打ち包丁に生かされている。その包丁は現在、青森県伝統工芸品に認定されている。また、刃物製作で培った鍛造の技術を活かして、溶接金物の製作も行っており、こちらの分野でも高い技術力が評価を得ている。

先人たちの技術を受け継ぐ

「例えばダム現場なんかで、機械据え付けの足場となる歩廊を作るとき、鉄の骨梁をガスであぶって曲がりやくるいを取ったりするんです。そのときは鉄の性質を知らないとできません」とお話を聞いた吉澤俊寿さんは言う。
「それを先人たちは、肌で、経験で知った。学術が進み、いろいろわかってきているけど、日々の仕事、生活のなかで知ってものづくりをしていた。だから日本のものづくりはすごいんです」
 350年という歴史のなかで、職人たちが育んだ技術を受け継ぎ、それをさらに磨きあげて次世代につなぐ。包丁のような目に見えるものだけでなく、鉄骨というわたしたちが普段目にすることのないところで近代的な建築物などにも歴史は息づいているのだ。

ACCESS

有限会社二唐刃物鍛造所
青森県弘前市金属町4-1
URL http://www.nigara.jp/
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