角館の桜が描く美
角館といえば桜の名所。武家地のしだれ桜は「角館のシダレザクラ」として国の天然記念物にも指定され、毎年多くの人がその美しさを堪能しに訪れる。その桜は角館にもうひとつの美を生んでいる。それが今回見学させていただいた樺細工だ。
樺細工は独特の技法でみがいた山桜の樹皮を貼り付けた伝統工芸品。山桜特有の光沢がありながらも渋く奥深い色合いが美しい。また、樹皮の防乾性、防湿性が特徴で、代表的な製品としては茶筒などのお茶道具類や茶だんすなどがある。
生活を彩る樺細工
今回伺ったのは1851年に創業された藤木伝四郎商店。樺細工というと茶筒のような円筒形のものが思い浮かぶのだが、こちらにはさまざまな商品が並んでいる。例えば写真立て。枠の部分が樺細工になっており、写真がより美しく映える。例えば名刺入れ。無機質なメタルの名刺入れでは味気ないが、これならば愛着がわくというもの。ほかにお盆やお皿、コースター、さらにはランチョンマットもあった。普段の生活のさまざまな場所で温かい「和の彩り」を加えてくれる。
日本の美を海外展開も
もともとは江戸時代に始まり、のちには武士の内職として発展した樺細工。当時は印籠、根付、帯締めなどが流行していたそうだ。やはり大げさに「美術品」というよりももっと身近な「生活の彩り」という面が強かったのかもしれない。
その伝統を受け継いでひとつひとつ手仕事で丁寧に作品を仕上げる藤木さん。デザイナーさんといっしょに仕事をしたりと現代的な感覚も取り入れた作品を作っている。海外への展開もしているが、美術品としてよりは「使ってほしい」という。作い手の顔を思い浮かべ作り続ける。伝統は生活のなかに生き続けてこそ伝統なのかもしれない。