使い込むからこその味。秋田杉を使用「曲げわっぱ」柴田慶信商店/秋田県大館市

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天然杉の美しさをたたえる曲げわっぱ

お店に入ると、商品としてならぶ曲げわっぱのほかに、昔から収集する曲げ物のコレクションが並んでいる。おじゃましたのは秋田杉を使用した曲げわっぱの製造販売を行っている柴田慶信商店。柴田慶信さんと息子の昌正さんにお話を聞いた。まず紹介してくれたのはそのコレクション。なかには数百年前のものもあると聞いて、中田をはじめ現場一同が驚いた。材料は秋田杉もちろん天然のものだ。現在は天然杉はほとんど手に入れらないというが、柴田さんは天然杉にこだわり、なんとか仕入れて商品を作っているそうだ。「人口杉でも樹齢100年を超えればよくなってくるだろうけど、肥料を与えて成長を早くしているので木目は異なると思います。それがどうなるか」と柴田さんは話す。

曲げわっぱ製作体験

店内を見たあと工場へと移動。曲げわっぱと簡単に言うが、木を曲げるというのはどういう工程を経るものなのか。まずは部材取りといって、製材された木から板を作る。それを一晩水につけたあと、約80度のお湯で10分ほど煮る。そうすることで木を柔らかくするのだ。そしていよいよ曲げ加工に入る。
これが実はかなり力のいる仕事。ゴロと呼ばれる丸太で、煮て柔らかくした板を巻きつけていくことで曲げていく。中田も挑戦するが、「これ、すごい力いる!」と想像以上の重労働に驚く。そうして曲げた板を乾燥させてつないでいく。それであの美しい曲線ができあがるのだ。

曲げわっぱは道具だから宝物になる

「このおひつでうちの会社は世に出ることができた」
そう柴田さんが話すおひつは、1989年にグッドデザイン賞を受賞したもの。内側の角を削って丸くすることで、ご飯をきれいにとれるようにしたデザインが評価されてのことだった。やはり曲げわっぱは”道具”なのだということが伝わってくる。
表面に加工を施さず、白木のままの曲げわっぱが好きだと柴田さんは話す。その理由は「使った跡が残るから」あるとき、丁寧に何十年も使ってきた白木の曲げわっぱを修理に持ってきたお客さんがいた。使い込まれた美しさに新しいものと交換してくれないかと頼んだが「おれの宝物になったからダメだ」と断られたことがあるそう。「道具ってそういうものなんだよ」と柴田さんはそのときのことを話してくれた。新品の透けるような美しさもいいが、使い込むからこそ、個性が出る。それが”宝物”になる。それが道具なのだと曲げわっぱの名工は教えてくれた。

ACCESS

柴田慶信商店
〒017-0044 秋田県大館市御成町2丁目15-28
URL http://magewappa.com/
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