上機嫌になれる日本酒“上喜元”
おいしいものを食べると、気持ちよくなれる。きっと誰でも感じたことがあるだろう。これはお酒だって同じだ。うまい酒を口に含んで喉を通すと、上機嫌になれる。ここ酒田酒造にはまさにその“上機嫌”をそのまま名前にした“上喜元”というお酒がある。有名なお酒なので知っている人も多いと思うが、すっきりとした飲み口にも関わらず、芳醇な旨みが漂う逸品だ。
創業は1947年。酒田市の5軒の造り酒屋が合同してスタートした。妥協を許さない昔ながらの手造りを行っている。上喜元は、国税局全国新酒品評会を、5年連続金賞受賞した美酒で、吟醸酒はJALのファーストクラスにも採用されているほどの酒だ。
いまが一番おいしい日本酒
お話を伺ったのは山形で指折りの名杜氏といわれる社長の佐藤正一さん。佐藤さんは「お米の種類や機械の向上といった技術の向上を考えると、日本酒はこれまでの歴史上、いまが一番おいしいと思います。数値と感覚を合わせていいものを作っていくことができる」と言う。
その言葉どおり、酒田酒造ではさまざまな試みを行っている。例えばお米の種類。「品種的には一番多くの米を使っている蔵元かもしれない」というように、ひとつにこだわらずに、いくつもの酒米にチャレンジしている。お米の種類によってお酒の味も違ってくる。その特性を知り、目指す酒の味によって米を変えているのだという。
機械技術の向上ということでは、運送という面も関係している。陸運が発達したおかけで、地方の小さい蔵でも全国の消費者を相手に仕事ができるようになったと佐藤さんは話す。
自分の好きな日本酒と出会える
「実は日本酒が好きな人は多いと思う」と試飲をさせてもらっている際に副杜氏の佐藤さんは話す。「ただ、自分の好みがわからない人が多いのも事実。いろいろと試せない人が多いんじゃないかな」。いいお酒に出会えないで飲まずにいる人が多いと感じているという。
たしかにお米の種類の話もあったが、試飲をさせていただいた酒もそれぞれ違ったうまさがある。香りももちろん違う。なかには口のなかと喉を越えたときの感じがまるで違って、ワインのように喉越しそのものを愉しめるお酒もあった。
発泡酒の製造も行っている
さらに発泡酒も造っている。発泡酒というのは、瓶やタンクのなかで酒に二次発酵をさせて炭酸ガスを充満させて作ることが多いが、ある有名な二次発酵のお酒を飲んだときに「これには勝てないな」と思ったのだという。そこで、無理に対抗するよりもガス充填をしていかにいいものを作るかということを考えた。発酵はだいたい30日ぐらいかける。だから同じように長期間ガスを充填し続けて泡が抜けないようにして、スパークリング感を味わえるような酒を造り出しているという。より良い酒のために発想を切り替えることも大事なのだ。
「いい酒を作りたい」という作る人の気持ちと、「うまい酒が飲みたい」という酒飲みの気持ちが一致したお酒が酒田酒造で造られている。